内容説明
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時代を超え、遠い憧憬を呼びさます鏡花の傑作短篇、初の画本化!
異界を覗く愉悦と甘美な慄き!
言語のみを媒介として組み立てられた、
鏡花の自我の奥底にひそむドラマの構造が、
私の目にありありと映り、その超現実的な
言語体験を私もまた痛切に共有し得るという、
芸術作品の秘密は何であろうか。
澁澤龍彦
(『偏愛的作家論』より)
尾崎紅葉のもとで小説修業をし、作風は、川端康成、石川淳、三島由紀夫、澁澤龍彦らに多大な影響を与えた、
泉鏡花の幽玄華麗な文体が煌めく名作短篇。
金沢の年間約2万人、開館以来、約40万人が訪れた、泉鏡花記念館で開催予定の
「泉鏡花×金井田英津子『絵本の春』原画展」公式画本。
こちらが覗けば向こうからも、というわけで魔の小路を覗いた
少年は美しいあやかしに微かな毒意を秘めたいたずらをされます。
鏡花の少年は常に無垢で純粋な魂の標号のような存在ですが、
それが無惨なもの悪意あるものと対置されるとき、私にはちょうど
手で作った窓のような装置となって束の間の幻想を見せてくれるように
思われました。 ―「あとがき」より―
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
106
両手を双眼鏡のような形にして眼に当てがうと、娘が幼い頃、…心底怖がった。眼が暗闇になって恐ろしいと。そのときわたしの眼は、娘を見ていたはずだけれど、娘の見ていた暗闇のわたしの眼は、ーー娘ではない何か別のものを見ていて…それを、娘はわたしの暗闇の眼に、見ていたのだとしたら…とても恐ろしいと、ふと。巳。巳巳。暗闇のわたしの眼は、土塀の連なる小路の木戸を覗き、巳巳巳。月の影に桃の枝の、かしほんの文字を見ていたかもしれなく巳巳巳巳。わたしはとっぷりと暮れた浅野川沿いの路や、主計町の坂を歩いて巳巳巳巳巳…2020/06/28
アキ
92
金沢・泉鏡花記念館で、金井田英津子『絵本の春』原画展を開催中。少年と女の妖しい幻想的な世界に、川の洪水に蛇があらわれ、男が逃げる。鏡花53歳、1926年大正15年の作品。版画で描かれる金沢の街並み、土塀や女川が風情がある。鏡花の世界をおさえた色合いで版画により印象的に見せてくれる。今はすっかり見なくなった蛇。異界とこの世を結ぶ生き物だったのですね。そういえば蛇も異界もこの頃馴染みがなくなった。2020/08/08
けんとまん1007
81
まさに、異世界。日頃の暮らしに沿うような形で存在する異世界を覗くと。。。。鏡花の文章と、金井田英津子さんの絵が相まって独特の世界を紡ぎだす。そんな世界は、自分のすぐそばにある。2020/09/06
sin
77
土壁の明暗に、「貸本」の貼り札に、鏡花の語りにネットにもテレビにも未だ侵食されない昭和の子供時代を思い出した。想えば明治や大正は彼方にあっても、古き風情があの大戦に晒されたこの国をかろうじて繋ぎ止めていたその頃の風景が残祉を留めて揺蕩っていた時代であったのかも知れない。そう考えると実社会を活きた平成を時代として捉えるには空虚で、いまの“戦争を知らない子供たち”は日本をも知らないのではないだろうかと思わざるを得ない。2021/05/12
mii22.
77
逢魔の刻、異界への入り口がひらかれる。普段はひっそりと人通りすらない、もと邸町であった荒れ果てた土塀の裏少路で少年の覗き見たものは...無垢な少年の目を通して、妖しく艶かしく怖い鏡花の世界が語られ、金井田英津子の郷愁を誘う挿画がその物語りを目の前に立ち上がらせ読者を鏡花の世界へ誘う。それにしても鏡花の紡ぐ物語のなまめかしいこと。うっとり、ぞくぞくさせられる。さらに挿画が夢幻の世界へ深く誘い込む。挿画と物語のコラボでは『朱日記』『化鳥』も素晴らしかったが、こちらも本棚永久保存版。2020/06/14
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