内容説明
奴(やっこ)の名は、大伴小虫。10歳のときから長屋王に仕えてきた。そして今、すべての真実を明かそう……。天武天皇の孫で、聖武天皇即位とともに左大臣となった長屋王は、729年に密告が原因で自害した。だが、藤原氏の陰謀とされるこの「長屋王の変」に、真の黒幕が存在した! 歴史の闇に迫る古代史ミステリー。
感想・レビュー
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hrmt
4
永井路子「美貌の女帝」と杉本苑子「穢土荘厳」と読み比べ。歴史の概略は当然変わらないのだけど、最終章の長屋王の変の真相についてはう〜ん(-。-;という感じ。何れにしても、その真実は遠く深い闇の中だけに想像はどこまでも膨らむ。2014/03/13
うたまる
4
いやあ、面白い。歴史物をたくさん読んできたが、飛鳥時代や奈良時代のものは少なく、たまに見つけてもほとんど資料に基づかない伝奇的なものが多かったので大満足。文体は独り語り調で、昔ながらの古文読みに戸惑うが、慣れれば当時の世界観に嵌まり楽しめる。実際の長屋王が唐土かぶれの堅物だったのか、長屋王誣告の黒幕が著者の想像通りだったのかは分からないが、「長屋王の変」を概観できただけで十分でした。著者の『崇峻天皇暗殺事件』や『大友の皇子東下り』も読みたいな。2013/05/28
あおい
2
いやぁ面白かった。だけど、違和感もあるの。。。続日本紀に長屋王の元側近だった大伴子虫が部署は違えど上役の東人を囲碁中口論し斬ったとあるがそれは「東人は長屋王の事を誣告せし人なり」だから。しかしその真相は、、、に困惑したの。最期までくると子虫の語りで始まる事こそがこの小説の核であるのだと思うが、”美貌の女帝”を読んでいなければこれほど違和感を感じなかったのでは、、、にしても、長屋王を陥れた真犯人を聞き激高して東人を斬ったが、はてその後子虫は厳罰には遭っていない、となればやはり、、、男性著者の結末ならではかも2021/05/03
Berlin1888
2
長屋王の従者・大伴子虫の目を通して描く長屋王の変、といおうか、奈良時代。内容はオーソドックスな歴史小説なので、古代史ミステリー、隠された真相がメインのような売り出し方には疑問あり。東北出兵についても詳しく描写されていたり、この時代の流れを把握するには格好の入門書です。 2013/12/25
kmiya3192
1
奈良時代前期に起こる長屋王横死事件。この真相を従者であった大伴子虫が明らかにする。壬申の乱から持統女帝が大砲律令制定とともに亡くなり藤原不比等が実権を握る。将来天皇の名があがる長屋王。しかし元明天皇は孫の首皇子を天皇と望むこれに藤原氏がなびいた。ここに長屋王は孤立する。陸奥の乱の平定に子虫はしばらく陸奥へと行き戻ってきた子虫が見たものは長屋王包囲網であった。基皇子なが亡くなると呪詛の嫌疑、僧侶殴打事件などで遂に長屋王の屋敷が包囲され王は亡くなる。後にすべて濡れ衣であったことがわかる。2021/04/28