講談社学術文庫<br> ロシア正教の千年

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講談社学術文庫
ロシア正教の千年

  • 著者名:廣岡正久【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 講談社(2020/07発売)
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  • ISBN:9784065200506

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内容説明

時に激しく弾圧され、また、時にロシア愛国主義を鼓吹し、人々の精神的支柱となってきたロシア正教の1000年の歴史を、政治と社会の流れの中でとらえた労作の文庫化。
西暦988年、キエフを中心にロシアの国家的統一を果たしたウラジーミル1世は、ビザンチン帝国に範を求めて東方キリスト教(ギリシア正教)を国教に採用した。以来、ロシアはビザンチン文明圏に属し、モスクワは「第三のローマ」としての存在感を高める一方、西欧文明の恩恵から隔絶されることになった。同じキリスト教を共有しながら、ローマ法、ルネッサンス、宗教改革を経験せずに近代への向かうのである。
ロシア革命による「無神論体制」の誕生と、ソヴィエト政権の熾烈な迫害は、宗教者たちを厳しく追い詰めたが、それゆえにこそ、ナチス・ドイツとの大祖国戦争では、スターリンに協力しソヴィエト愛国主義の先頭に立つが、戦後はふたたびフルシチョフの弾圧を受ける。ゴルバチョフ政権下でようやく「宗教ルネッサンス」を迎えるが、ソヴィエト体制の崩壊は、正教会にも深刻な分裂の危機をもたらしたのだった。
文庫化にあたり、「プーチン政権下の正教会」を大幅に加筆。
〔原本:『ロシア正教の千年――聖と俗のはざまで』日本放送出版協会刊、1993年〕

目次

学術文庫版まえがき
序章
第一章 受洗千年祭を祝ったロシア正教会
第二章 生き方としてのキリスト教信仰
第三章 ロシア愛国主義の源流
第四章 第三のローマ=モスクワ
第五章 正統と異端
第六章 国家による教会支配
第七章 ロシア革命と「無神論」体制の誕生
第八章 ソヴィエト体制下のロシア正教会
第九章 宗教ルネッサンスと内部分裂のジレンマ
結章  ソ連崩壊後のロシア正教会と東方正教世界
ロシア正教会略年譜
あとがき
学術文庫版あとがき
引用・参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

syaori

66
ロシア正教という「ファインダーを通して」ロシア史を追う一冊。キエフ公国のウラジーミル聖公のギリシア正教導入から始まって、タタールの軛という苦難の時代における影響力の拡大、ツァーリ制や共産党体制下での規制や迫害と国家との独特の癒着関係などが語られます。その歴史を受けて現在のロシア正教会が抱える矛盾や、ソヴィエト崩壊前後の民族主義の高まりにより多様な民族を抱えるロシア正教会が直面した危機と課題、ビザンツ帝国滅亡以来優位を確立していたギリシア系正教会との新たな関係などにも目配りされていて、大変興味深い本でした。2022/01/03

松本直哉

25
普遍性と理性とラテン語によるカトリックと違って、民族性と感情とロシア語によるロシア正教は、民衆の心の奥底に響く何かを持っていたために、度重なる弾圧にも屈せずに生き抜いてきた。ソビエトの非人道的な迫害を毅然として批判したチーホン総主教のような政府批判の一方、独ソ戦では民族感情に訴えて戦意を鼓舞し、結果的に政府に利用されることになる正教会の、国家との距離の取り方は、安易な単純化を許さない。チェルノブイリの事故をきっかけに信者が増えた事実は、依然としてこの宗教が人々の心の拠り所であり続けていることを示す。2022/08/25

MUNEKAZ

16
もとは1993年刊行。当時のソ連崩壊の衝撃冷めやらぬといった熱量をもった文体が印象的。陰に陽にロシアの政治と向き合ってきたロシア正教の、一筋縄ではいかない千年の歩みが紹介されている。ローマ・カトリックのような超国家的で普遍的な宗教ではなく、各国ごとに独立性を保った正教会らしく、ロシア民族主義との親和性の高さが興味深いところ。ソ連崩壊後のウクライナ正教会との対立から分離に至る流れは、今回のウクライナ侵攻を理解する上での補助線になるのではと。2022/03/02

ジョニジョニ

13
ドストエフスキーやトルストイを読んでいて、よくわからなかったロシア正教。千年の歴史を駆け足で読ませてくれて、おぼろげに理解しました。現在の戦争は残念ながら、すぐには終わりそうにない。であれば、両者の歴史を少しでも、知っておきたい。世界は広すぎて、全然知らないことばかりだから、なんでもめるんですか?と、聞くことしかできません。少なくともロシア正教の現総主教、キリルさんは、プーチンさんを支持している。そしてキエフは、千年前の正教始まりの地。でも今は、カトリック系のウニヤ教会の勢力が強い。イエッサが泣きますよ。2022/04/11

バルジ

5
主にロシア正教の「聖と俗」に焦点を当て、時の政治権力とどのような関係を気付いていたかを主にソ連崩壊後までを射程に概観する。民族宗教としてのロシア正教は「第三のローマ」を標榜し「周縁」的ながらもその中心性を主張する。ロシアにこそ「キリスト教」の恩恵が与えられ文明的使命を自覚するロシア正教は政治権力との激しい闘争の中で次第に「帝国教会」としての性格を帯び始める。本書でも言及され2022年には武力侵略にまで立ち至ったウクライナ問題も宗教的な淵源がある。2023/03/04

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