賢者たちの街

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賢者たちの街

  • ISBN:9784152099396

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内容説明

1937年の大晦日。25歳の本好きな秘書ケイティは、下宿先のルームメイトのイヴとともに繰りだしたグレニッチ・ヴィレッジのバーで、完璧な服装と振る舞いの若き銀行員ティンカーと出会い、友達になる。この一夜が、3人を上流階級へと導く1年間の幕開けとなる──ウィットと教養に溢れた会話、ディケンズ、ソロー、クリスティーといった往年の作家の名作、20代の万能感と残酷な喪失……夢に向かって登ってゆく者たちの青春のきらめきをすべて詰め込んだ1冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アン

99
『モスクワの伯爵』著者デビュー作。1937年大晦日グレニッチ・ヴィレッジのナイトクラブ。タイピストで読書家のケイティと自由奔放な友人は、紳士的て魅力ある若き銀行家と出会いますが思わぬことが起こり…。マンハッタンの光景が生き生きと伝わり、会話や小道具も洒落ていて映画のよう。華やかな上流社会への羨望や野心、人生の選択、気骨ある生き方。移ろう季節と多くの文学作品と共に綴られる友情と恋。穏やかな気持ちで青春の日々を愛おしむことができるのは、今の幸せがあるから…。「ニューヨークって人をすっかり変えちゃうのよね?」 2020/09/25

けろりん

74
大恐慌の暗雲が未だ庶民の生活に影を落し、欧州の戦火が遠雷となって響き寄せるマンハッタン。見上げる摩天楼に輝く人造の宝石、天を衝くビルの狭間に瞬く星々。ロシア移民で、港湾労働者として生涯を終えた父の遺した大量の本が唯一の財産で、秘書として倹しく暮らすケイティと、米国中西部の裕福な実家からの援助を拒み、下宿屋でケイティと部屋をシェアする野心家で、美人なイヴ。二人の娘は大晦日の夜、場末のジャズバーで、若き紳士に出会った。豊潤な文学の香り、音楽の旋律、夢と野望の街。この作品は地図を手元に読み進める事をお励めする。2022/04/26

Panzer Leader

63
「モスクワの伯爵」の作者のデビュー長編作。1937年大晦日のニューヨークで、本好きの秘書ケイティとルームメイトのイヴは魅力的な青年ティンカーと知り合った。この三人の若者達の友情・恋愛・仕事・巡り会う人々を、誰もが惹きつけられる街ニューヨークの描写とともに描かれる青春小説。落ち着いた年齢になってしまった自分には彼らの生き様がとても眩しく感じる。2021/01/20

seacalf

50
読書の醍醐味を思う存分味わわせてくれた『モスクワの伯爵』のエイモア・トールズのデビュー作。1930年代のニューヨークを舞台にはち切れんばかりの若さと才覚を発揮しながら冒険を繰り返し、成長を続けるケイティが好ましい。全編にわたってウィットに富んだ会話で埋め尽くされている。ティンカー、イブ、ウォレス、本を閉じても忘れがたい人物達が生き生きと描かれている。煌めく世界に退廃的なアクセントが絶妙で独特の雰囲気。今回は今一つ乗り切れなかったが『モスクワの伯爵』でめろめろにしてくれたので、今後が楽しみな作家の一人だ。2020/07/30

星落秋風五丈原

33
本書には誰も悪者がいない。皆ウィークポイントを持っているし欠けたる部分も持っている。相手を金で思うままに操っているだけで良しとしていたはずの名流夫人は、いざ彼が去ろうとすると、みっともない焦りをスマートな言葉に包みながら恋敵を牽制する。偶然の出来事で恋を得た女性は、恋敵を遠ざけたにも関わらず、絶好のチャンスをなぜだか不意にする。売れない絵を描き続けてきた男性は、他人にタバコをたかるほど困窮していながら、兄弟から与えられる金を燃やして去っていく。誰でもいっときは賢者になるが、その他大勢の期間は愚者にもなる。2020/08/13

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