内容説明
その男がゆくところ、必ずや冒険と怪奇が待ち受ける。
男の名は中村春吉。
明治の世に自転車で世界一周無銭旅行を決行した快男児である。
困っている人間を見捨てておけぬ性分ゆえによく事件に巻き込まれる。
そんなバンカラの権化のような男が、
蘇門答剌(スマトラ)で面妖な植物と遭遇したのを皮切りに、
波斯(ペルシヤ)では怪魔像と対決し、
露西亜(ロシア)では突如現れては消えるバラバラ死体の謎に挑む。
中村春吉が求めるのは秘宝にあらず名誉にあらず。
ただひたすらに未知なるものを求めて探検と旅を続けるのみ。
明治の世界を舞台に冒険譚とSFを見事に融合させた傑作が、
単行本未収録の二篇を加えた完全版として令和の世に甦る!
編者解説:日下三蔵
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鷺@みんさー
32
サクサクっと読了。シンプルで分かりやすく、エログロ要素も奥ゆかしく存在しつつ、カラッと明るいのが良い。ヒロインはあんなに頭がいいなんて、騙されて遊郭に売られるまでは、さぞやんごとなきお方だったのでは…。日露戦争は宇宙人の陰謀説が一番面白かった。2020/12/01
ゲオルギオ・ハーン
29
自転車の横でポーズを決めるオッサン、鬼っぽいなにか、UFOと表紙から一撃を叩き込んでくる一冊。実在の冒険家 中村春吉を題材にした歴史SFシリーズの中短編集。ジャワ島からモザンピークまでと旅の範囲は広く、シリーズのお約束のご都合主義(褒め言葉)で数々の危機を切り抜けていく。偉人は出ない代わりにとんでもない相手がたくさん出てくる(巨大ザリガニ、食人植物、マッド・サイエンティスト坊主など)。しっかり者ヒロインの志保や人格者系守銭奴 石峰君も春吉に負けず活躍する。いろいろと濃いシリーズだと再認識させられる。2024/02/29
one_shot
14
冒頭の一言目が「わが輩」で始まる小説が面白くないわけがない。時は明治三十六年、ライト兄弟が人力飛行に成功した年に極東の小国を飛び出した世界自転車無銭旅行者・中村春吉は、スマトラの女郎宿から助け出した美女・雨宮志保と石峰青年とともに世界の僻地をまわり見た事もない怪獣猛獣宇宙人らを相手に荒唐無稽な死闘を繰り広げる。しかし何よりも私の心を温かくさせたのは、旅先の見知らぬ人々の無銭旅行者に対する手厚い歓待だった。作者の横田順彌は2019年に逝去されたが、この馬鹿馬鹿しき世界、は今こそ読まれるべきと思う。2021/01/08
ヴィオラ
13
なによりもまず、主人公・中村春吉という人物が実在していたという事に驚く。ネットで調べると、小説内での描写も割と実際あった(と言われている)ことだったりするのも驚く。世界からどんどんと秘密がなくなっている現代、逆に「秘境探検物」ってのが読んでいて楽しい。作者の「明治SF」は、まとめて読みたいなぁ。個人的には、少し時期がズレてたら「春吉vs切り裂きジャック」が読めたのに…とか思っちゃったw2020/08/08
スターライト
11
〈SFアドベンチャー〉に掲載された、明治の快男児・中村春吉の冒険譚6篇を収録。自転車による世界一周無銭旅行を決行する春吉は、お供に石峰青年と魅力的なだけでなく機転も利く雨宮志保を連れて、スマトラを皮切りにチベット、ペルシャ、ペテルブルグへと世界各地をまわる。そして行く先々で奇怪な生物や現象を見聞きすると、果敢にその正体を確かめるべく現地に赴く。冒険小説の王道を行く展開に、男2人が窮地に陥った時の、紅一点の志保の機転がすばらしい。女性キャラクターをいわゆる「添え物」にしないところに、好感が持てる。2020/10/02
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