筑摩選書<br> 皇国日本とアメリカ大権 ──日本人の精神を何が縛っているのか?

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筑摩選書
皇国日本とアメリカ大権 ──日本人の精神を何が縛っているのか?

  • 著者名:橋爪大三郎【著】
  • 価格 ¥1,540(本体¥1,400)
  • 筑摩書房(2020/06発売)
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  • ISBN:9784480016942

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内容説明

戦前、多くの日本人が「国体」思想に飲み込まれ、戦争に動員されていった。なぜ日本人は、この流れに抗えなかったのか? 総力戦に敗北した後、天皇は連合国軍最高司令官に「従属」する形となった。実際にはアメリカ大権となっているにもかかわらず、鋭敏な知識人ですら、それを直視できずにいるのはなぜか? 戦時期に教育の場で広く読まれ、国民に深甚な影響を与えた『國體の本義』の解読をとおして、戦前・戦後を貫流する日本人の精神の「無意識」を問う。ふたたび日本が内閉しようとしている今、来し方行く末を考えるに際し、必読の書!

目次

序論 『國體の本義』の恐ろしさ
忘れられた本
総力戦に備えて
『國體の本義』の解説書
中学校の教授要目
国体明徴運動
天皇機関説
なぜ国体明徴なのか
『國體の本義』の恐ろしさ
皇国主義
マルクス主義、ナチズムと張り合うロマン主義的総合
洗脳は解けたのか
第Ⅰ部 『國體の本義』を読む
国体という呪縛
会澤正志斎の『新論』
『國體の本義』の構成
1・1 天壌無窮の神勅
国体について
国体の定義
天照大神の神勅
神代七代
天照大神
天孫降臨
神鏡奉斎
天壌無窮
万世一系
三種の神器
神勅の構造
ユダヤ教との類似
ユダヤ教の契約
神勅はどういう契約か
神勅は無条件
約束の地
誰が王になるか
1・2 天皇
神武天皇
現御神
帝国憲法の条文
北一輝と皇道派青年将校
憲法のパラドクス
市民革命と憲法
社会契約説と憲法
市民革命の神話
欽定憲法のスタイル
帝国憲法の場合
イギリスの場合
現人神の神話
現人神のさじ加減
帝国憲法は両義的
現人神の正体
天皇は神裔
祭政一致
国土経営
おほみたから
だめな天皇
列王記
天命と神勅
徳があるのか
忠孝一如
1・3 臣民
臣民は要注意
臣と民
臣民の忠節
人民との違い
忠の道
忠君と愛国
忠の序列
君側の姦
孝の道
忠孝一本
和について
軍事力と和
和の諸相
まこと
1・4 国史
国史とは
建武中興
尊皇思想
天皇と憲法
1・5 国土と国民
国土と職業
風土
1・6 祭祀と道徳
宮中祭祀
神社祭祀
1・7 学問と科学
科学と国体
1・8 政治・経済・軍事
政治体制
神勅と憲法
政体
経済
軍事
1・9 結語
新文化の創造
西洋思想
中国の思想
西洋思想との対峙
日本と世界
1・10 国体のゆくえ
国体と教育
国体と世論
第Ⅱ部 天皇親政とアメリカ大権
2・1 なぜ天皇親政説なのか
思想のバトル
個人主義
後退戦
正面戦争
さまざまな普遍性
天皇親政とは
信念の構造
老舗の酒屋
立憲君主制と伝統君主制
忠誠の対象
憲法の統帥権
聖霊とはなにか
聖霊と、天皇親政
近代軍とミカド軍
なぜ戦死するのか
なぜ玉砕するのか
硫黄島の戦い
統帥権の独立
張作霖爆殺事件
天皇親政説のパラドクス
2・2 天皇の近代
天皇という君主
英国王室と国教会
天皇と神道
皇統連綿
神国日本
尊皇思想
忠と孝
忠(義)の拡大
忠(義)の脱構築
正統な君主
尊王論の特質
イスラムの王
インドの王
中国の皇帝
皇国主義の特異性
強力な国営の運動
立憲と親政
防衛反応
改宗する天皇
ネイション結集の核
国体は守られたのか
2・3 アメリカ大権
天皇の大権
大権をしのぐ権限
なぜ護憲
親政との類似
独立とアメリカ大権
日本は保護国
主権と条約
自主憲法制定
アメリカ親政
国体は守られた
2・4 三島と吉本と国体と
法学部の三島
遅れてしまった慚愧
呪詛の声
裏切りなのか
戦死の、ふたつの相
三島の美学
「人間宣言」の背後
脱洗脳プログラム
見て見ぬふり
八月革命説
演技と憑依
責任は誰に
楯の会
国際反戦デー
二・二六を真似る
ほんとうの二・二六
三島は宮城を狙ったか
人間宣言を取り消す
取り消しの強要
襲撃の結末
三島の分裂
三島のねじれ
三島の戦後
父と子
『共同幻想論』の場合
『國體の本義』を清算する
内閉を打破せよ
2・5 大東亜共栄圏の残照
台湾総督府
本省人と外省人
二・二八事件
台湾の民主化
朝鮮総督府
韓国と北朝鮮
金王朝と主体思想
あったことにされた革命
迷走するナショナリズム
なぜ反日なのか
国体の残滓
結論
何に負けたのか
もうひとつの病気
普遍主義は有効か
皇国主義に内在すれば
醇化と純化
皇国主義をほどく
あとがき
参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

54
「國體の本義」の丁寧な解読を通じて、日本の国体論が論じられる。橋爪先生は「國體の本義」を「洗脳そのものである」と断言する。確かに、文部省が主導する見事な洗脳だと感じた。本来、天皇機関説で成立している大日本帝国憲法の条文を「現人神の規定」だと読み替え、忠孝一如、臣民、醇化などの概念を駆使して、天皇親政説に国民を誘導する。そして、戦後の日本は、明治以来の国体の枠を維持したまま「アメリカ親政」になっただけなのか…。日本の独自性と世界の普遍性との間でこの国のあり方を考えるために、貴重な示唆が得られる一冊である。2020/07/01

ナリボー

5
8/10 大戦前後の国体がどのように形成されていったのか、筆者らしく簡潔で平易に書かれていて終始関心を持って読み進められた。特に天皇機関説と天皇親政説の違いやそれぞれの立場、実際に起きたことをどう整理するか、丁寧にわかりやすく素晴らしい解説だと思った。2021/10/04

がんぞ

4
日本が名目的にも君主制であったのは数十年に過ぎない。神道が「宗教を超えた信仰」とされ、神社が国家保護され靖国神社が設立され対外戦争に備えたのも/「臣民」も帝国憲法で初出の造語で、儒教で「臣」は王に仕えるが「民」は政に関わることはない。国民に服従の義務を課した/佐藤優『日本国家の神髄』を批判し、2.26事件で葬られた皇道派が残存して「国體明徴運動」の指導書『神髄』となり、帝国を破滅させた、とする。一転して史上まれな占領の成功は、天皇の大権がGHQに移行したからで、日本国憲法より日米安保条約は両国に重要とする2022/01/01

老齢症状進行中

1
橋爪さんの本は、読んでいなかったですが、大澤さんとの対談本の面白さにひかれてこの本も読みました。戦前の日本の狂気を理解するための最良の素晴らしい本だと思います。ただタイトルが残念です。戦前日本の狂気ー国体を読み解くとかもう少し魅力的なタイトルが望まれます。読後に疑問に思ったことは、国体の本義の制作主体のこと。表面的には文部省ですが、官僚が考えたことなのだろうか?この悪魔の書の発案者とその意図が知りたいなと思いました。一億玉砕に結びつく必殺イデオロギーは、当初の意図を超えて、一人歩きしてしまったのだろうか?2022/02/20

とらちゃん

1
全てを太平洋戦争に向かわせるために文部省が編纂した戦前の聖典である「國體の本義」。皇国主義の拠り所となり、曲芸のようなロジックと天皇親政の一大家族国家という情への訴えで、世界に通じる普遍性と日本の優れた特殊性を感じさせ、人々の献身を促す見事な洗脳手段であったことがよく理解できた。以前訪れた知覧特攻平和会館で涙ながらに見た特攻隊員の遺書や特攻前日の写真。死の前日の何とも晴れやかな表情に違和感を覚えたが、なるほどと腑に落ちた。こんな悲劇を繰り返さないよう今後の日本が描くべき世界観の大切さを思わずにはいられない2021/03/03

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