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内容説明
近代の日本文学史にそびえ立つ《小説の神様》志賀直哉。その知友、父母、祖父ら一族の人びとの過去へ遡りつつ、直哉との関わりのひとつひとつの襞を解きほぐして、作品の核心に迫る。のちには自分自身の一族をあつかった名作『流離譚』を発表するにいたるまでの著者独自の方法意識が書かせた、作家・作品論の白眉。作家が鋭い感性で作家を論究する、小説的評論=長編エッセイの魅力。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブトムシ
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p320より。もっとも井伏(鱒二)さんが、志賀さんの前で、ひとことも口がきけなかった理由の一つに、太宰治が死ぬまえに書いた「如是我聞」のことで責任を感じていたということもあったかもしれない。いま読んでみると、これは太宰氏が志賀さんに喧嘩を売る、というよりワザと奇声を発して志賀さんのまわりを踊ったり逆立ちしたりして、やたらに騒ぎまわっているような奇文であるが、井伏さんはいまも、太宰がこれを書いたことを取り返しのつかぬ悪事と考えておられるようだ。太宰治『もの思う葦』所収の「如是我聞」と合わせてお読みください。