ランスへの帰郷

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ランスへの帰郷

  • ISBN:9784622088974

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内容説明

労働者階級出身のゲイとして差別に苦しんだ知識人の自伝。階級社会、右傾化、執拗な性規範、左翼知識人の空疎を描いたベストセラー。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おさむ

33
フランスの貧民階級に生まれ、苦労を重ねて社会学者となった著者の自伝。同国のすさまじい格差社会が赤裸々に綴られている。昨年見た映画「レミゼラブル」を思い出した。かつては左翼だった労働者階級の右傾化の分析が興味深い。ブルジョワへのルサンチマンがアルジェリアなどの外国人労働者への差別心として再構築された。本著のもう一つのテーマは、同性愛者としての苦悩だ。蔑視されながらも険しい道のりを克服する著者には頭が下がる。仏のみならず、独でもベストセラーになったのは、現代社会の普遍的な問題点が凝縮されているからなのだろう。2020/11/06

たま

29
ランスの貧しい家庭に生まれた著者が、絶縁状態にあった家族(貧困、無教養、暴力、飲酒)、自らの教育、同性愛を振り返る。知識人である著者にとって生い立ちは恥辱であり、それを語るのは困難なことだった。簡潔で率直な語りに籠もる痛切な響きに胸を打たれる。著者は恥辱を個人の心理に還元せず、哲学、社会学を参照しつつ社会システムが押しつけるスティグマとして捉え直す。切れば血の滲むような知的営為の切実さも読み応えがある。フランス社会だけでなく、階層の固定化が言われる日本についても考えさせられることの多い記憶に残る本である。2021/04/25

ハルト

12
読了:◎ 哲学者エリボンの、父の死をきっかけに、労働者階級の生い立ちから、地元のリセそしてパリ大学に行く学生時代、ゲイである自身の体験を綴り、ふり返って総括した自伝。ブルジョワ階級とのヒエラルキーに苦しみ、ゲイであることに苦悩し、それら出自からの恥の感情に苛まれて生きる。そして差別が、「支配と服従のメカニズム」が正常に働く異常さを指摘する。完全に重ね合わせはできないが、今日本で起こっている格差社会や移民やLGBTのことを思い出して読むと気づかされるものがある。2020/07/22

山のトンネル

9
階級やセクシャリティについて言及2023/06/29

hasegawa noboru

8
自伝であると同時に貧民層という自らの出自と生きて来た社会環境を考察した思索の書。フランスと日本では階層格差のありようも随分違うようだが、一九五三年生まれの著者と生きて来た時代を同じくする故か、強烈なインパクトとともに共感できた。泥酔して帰った父が手当たり次第に物を投げつけた消えない幼児期の恐怖の記憶。家政婦として働き、工場のラインで働き続けた老いた母の身体が示す<具体的、身体的な意味での社会的不平等><「不平等」という言葉自体が><搾取の剥き出しの暴力を非現実化する婉曲表現であるように、私には思えてくる>2021/02/02

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