科学技術の失敗から学ぶということ リスクとレジリエンスの時代に向けて

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科学技術の失敗から学ぶということ リスクとレジリエンスの時代に向けて

  • 著者名:寿楽浩太【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • オーム社(2020/06発売)
  • ポイント 18pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784274225666

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内容説明

「覆水盆に返らず」起こってしまった結果から未来を考えよう!!
 本当に科学技術の失敗から学べているのか。もしうまくいっていない部分があるとしたらそれはなぜなのか。そういう問題点を乗り越える方法はないのか。
 科学技術の社会学を専門とする筆者は、工学と社会科学の間を往来しながら、工科系の大学の授業で、そうした問いに取り組んできました。
 本書はその経験を踏まえて、現実に起きた事件を通して、これらの問いについてできる
だけ平易に、しかし同時に深く考え、答えを試みようとするものです。

目次

第1章 タコマ橋とコメット「失敗から学ぶ」サクセスストーリー
 「失敗から学ぶ」というパラダイム
 新時代の合理化設計でつくられたタコマ橋
 タコマ橋の崩落
 コメットの連続墜落
 「金属疲労」に関する学び
 未知との出会いとイノベーション
 ただ、失敗から学んでも……
 進歩の時代と失敗からの学び
第2章 機体が言うことを聞かない!何が最新鋭機を墜落させたのか(1)
 魔の2分間
 「着陸やり直し」の謎
 ブラックボックスが記録した「ミス」
 言うことを聞かない機体
 人間不信が生んだ落とし穴
 セールスポイントとしての「さらなる安全」
第3章 高度がおかしいぞ!何が最新鋭機を墜落させたのか(2)
 つかなかったランプ
 「電球」に夢中
 空白の4分間
 会話の「あや」の落とし穴
 ミスを防ぐには?
 あちらを立てればこちらが立たず
第4章 「チャイナ・シンドローム」巨大技術の事故は防げないのか
 映画「チャイナ・シンドローム」とスリーマイル島原発事故
 多重防護の破れ
 ヒューマン・ファクターへの注目
 巨大技術の失敗は防げない?
 事故が起こるのが「ノーマル」
 だとすればどうするべきなのか?
第5章 スペースシャトル・チャレンジャーの悲劇 誰がシャトルを打ち上げさせたのか
 打ち上げ 73秒後の悲劇
 ボイジョリーと技術者の倫理
 本当に「悪玉」が元凶なのか?
 「逸脱の常態化」:よい人がみんなで起こす悲劇
 「第三者の目」の本当の意味
第6章 ディープウォーター・ホライズン 大企業はなぜ失敗を繰り返すのか
 無事故記録式典の夜の悲劇
 平穏無事に潜む危険
 「組織事故」と「深層防護」
 防護を破るもの
 「スイス・チーズモデル」
 組織事故は現代の技術の宿命
 「安全文化を高めよう!?」
 組織は変われるか
第7章 日航機乱高下事故と機長の裁判 原因究明か、責任追及か
 組織事故の被害とどう向き合うか
 「唯一の」人身死亡事故
 事故調査の結果:「習熟が不十分」
 機長の刑事訴追と裁判
 パイロットたちの不満
 ヒューマン・エラーをどう防ぐのか
 社会正義と責任追及
 原因究明か、責任追及か
第8章 通勤電車の大事故は誰のせいなのか 組織の責任を問う難しさ
 日常を暗転させる重大事故
 「運転士のミス」の裏側
 歴代社長たちの刑事裁判と無罪判
 「組織の責任を問う」ことの難しさ
第9章 3・11複合災害の衝撃 レジリエンス・エンジニアリング論とは
 未曽有の大災害の衝撃
 本当に足りなかったものは何か
 「想定」の中の安全と「想定外」
 レジリエンス・エンジニアリング
 レジリエンス・エンジニアリングの具体的なイメージ
 「臨機応変」ができるのは人間だけ
 リーダーたちに求められること
第10章 これからの「科学技術の失敗からの学び」のために
 「失敗から学ぶ」ことの本当の難しさ
 科学や技術が教えてくれないこと
 2・5人称の視点
 事故を記憶すること、事故と向き合い続けること
 決めるのは私たち:何が本当に大切なのか
 何かが起きてからではなく、何かが起きる前に

あとがき

索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

GX

7
2.5人称の視点:「もしも自分が(あるいは家族や大切な人が)事故にあっていたら」という視点を取り入れたときに、専門家として何をするべきかを考える視点」 この辺、ひとを支援する専門職の方にとっても大事な視点ですね。2020/07/05

aoi

3
再読2021/12/27

aoi

3
過去に起きた大事故を知ることでもし失敗が起こった場合私たちはどう向き合うのかを考える本。 機械に頼り過ぎても人間に頼り過ぎても事故が起きる、最新鋭の機体に事故が多いのが怖かったなぁ 2.5人称の視点というのは大切だと思った。被害者としての視点と理論的に事故の原因を考える視点。その中間で物事を捉えて考える大切さは事故に限らず様々な場面で応用出来そうだった。(というかその必要があると感じた) 理屈通り、卓上論でのみ語るのではなく相手の気持ちを鑑みる大切さは専門職の人に不可欠だと思う。思考の距離感難しい〜〜2020/08/19

Isamash

2
東大文学部卒、現東京電機大の聚楽浩太准教授の2020年の著作。複合災害へのレジリエンス(弾性力や回復力)の考え方は魅力的。想定範囲で機能100%維持を目指すのでなく、どんな場合でも出来るだけ機能を維持しなるべく早く容易に回復するにはどうしたら良いかを問題とする考え方だそう。提唱者の一人E.ホルナゲルはレジリエンスを高めるため、危機を救った成功事例の要因とりわけ人間の活躍に注目し、それをシステムに取り入れるにはどうしたら良いかを考えることを促しているという。ビジネスで成功要因分析は有効と思っており、大納得。2021/08/21

1
(202006,504)パイロットや医師は、航空機事故や医療事故を個人のミスではなく組織に原因があるという立場の人が多い(当然だ)。が、交通事故で重大事故を起こした人にも刑事罰が下るのに、航空機事故や医療事故では免責なのは辻褄が合わず、本書でこの解を提示してはいない。また、原発事故と想定外の観念も、言い尽くされていたことである。どんな天災があっても機能を失わないためには、「作らない」しかなくなってしまう。しかし防波堤など、3.11前と同じ対策をしているとしか思えない。これの解もない。いささか不完全燃焼。2021/03/13

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