内容説明
川上弘美さんの恋愛と結婚を描いた長編小説。一気読み必至の傑作です。
主人公は1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。このパラレルワールドに生きるふたりの女性は、いたかもしれないもうひとりの「自分」。それは読者のあなたのもうひとりの「自分」かもしれませんし、留津とルツの恋人や夫も読者のあなたのもうひとりの「自分」かもしれません。
主人公の2人のように「いつかは通る道」を見失った世代の女性たちのゆくてには無数の岐路があり、選択がなされます。選ぶ。判断する。突き進む。後悔する。また選ぶ。進学、就職、仕事か結婚か、子供を生むか……そのとき、選んだ道のすぐそばを歩いているのは、誰なのか。少女から50歳を迎えるまでの恋愛と結婚が、留津とルツの人生にもたらしたものとは、はたして――
道は何本にも分かれて、つながっていて、いつの間にか迷って、帰れなくなって……だからこそ「人生という森は深く、愉悦に満ちている」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
458
日本経済新聞の連載小説(2016年1月~2017年2月)として書かれた。執筆に際して、おそらく作家はパラレルな世界を描こうとする構想は立てていただろうが、その後の展開については出たとこ勝負だったのではないだろうか。ご本人自身が、この小説の主人公「るつ」(表記は様々)を書きつつ、様々な人生を楽しんだものと思われる。読者の側からすれば、最後はどんな風に収めるつもりだろうかとハラハラしつつ読み進めることになるのだが、まずはなんとか収束させたといったところか。ただ、達成感には幾分届かなかったようであるが。2022/07/28
starbro
302
川上弘美は、新作中心に読んでいる作家です。二人の留津とルツが、パラレルワールドで60年の人生を森を彷徨うに生きていきます。二人の女性のクロニクル、同世代ということもあり、共感出来ました。後半には更に複数の『るつ』が登場し、混沌として行きます。500P強、興味深く一気読みしました。2017/11/20
yoshida
238
川上弘美版の「女の一生」と言えるか、いやそれ以上かも知れない。1966年に生れた留津、ルツ。2027年に60歳になるまでの様々な可能性が描かれる。「るつ」、「瑠通」、「る津」。それぞれの選びとった現在とこれからの未来。読み進めるうちに自分の人生と重ね合わせ、未来を想像し、じっくりと滋味深く読ませる。ルツと俊郎の金銭感覚を巡るやり取りのリアルさに唸る。そうなのだ、どの可能性も起こり得たこと、私達が選んだこと。そしてこの先の道は可能性に満ちていることを教えてくれる。人生は悪くない。日々を大事に生きようと思う。2017/12/01
ウッディ
193
留都とルツ、パラレルワールドを生きる一人(二人)の女性の生涯が交互に淡々と語られます。引っ込み思案で、専業主婦になり、夫に浮気される留都。快活な性格で、仕事を続けながら不倫をするルツ。何かの拍子で、自分にも別の人生があったのではないかと思わせる面白い構成でした。違う選択をしていたら、もっと幸せになっていたかも知れないと、考えることはあるが、小説の留都とルツのどちらの人生が幸せなのか簡単に言えないあたりが、この小説の奥深さのような気がしました。鏡の前でもう一人の自分と語り合うシーンが興味深かったです。2018/09/20
抹茶モナカ
140
1966年の同じ日に産まれたルツと留津。パラレル・ワールドを並行して物語る小説。二人の女性の人生の『もしも』の話なので、読んでいて、考えさせられる部分も多かった。じっくり時間をかけて読みました。全く違うようで、重なるような2つの人生。2017/12/30