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内容説明
国家とは何か。そして国家と自分はどう関わっているのか。「国家は共同の幻想である。風俗や宗教や法もまた共同の幻想である。もっと名づけようもない形で、習慣や民俗や、土俗的信仰がからんで長い年月につくりあげた精神の慣性も、共同の幻想である」。原始的あるいは未開的な幻想から〈国家〉の起源となった共同の幻想までを十一の幻想領域として追及。自己幻想・対幻想・共同幻想という三つの構造的な軸で解明し、まったく新たな論理的枠組みを提言する「戦後思想の巨人」の代表作。改題・川上春雄、解説・中上健次
目次
角川文庫版のための序
全著作集のための序
序
禁制論
憑人論
巫覡論
巫女論
他界論
祭儀論
母制論
対幻想論
罪責論
規範論
起源論
後記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yutaro sata
28
始めて読んだときは、全然分からないのにとにかく衝撃を受けた記憶があったのだが、読み返してみると、「とりあえず何を言いたいのかは分かる」ぐらいには理解が進んでいて感動する。しかしまだまだこれで終わりではなく、そうすると今度は、「吉本さんはどのような方法で『共同幻想論』を組み立てたのか」が気になってくる。関連書や入門書的なものに進みたいと思う。2023/09/18
紫羊
25
がんばって読んでみた。著者による「序」が三つもあって、これらが全編通して最も難解だった。いきなり気持ちが折れそうになりながら読み進んだ。章を追うにつれ、かなり心許ない手応えながら、何となくわかったような気持ちになることもあったが、結局のところ、だから何なのかはわからないまま読み終わった。がんばったご褒美的に楽しみだった中上健次氏による解説は、実際のところ素晴らしいご褒美だった。2023/09/29
原玉幸子
18
学生の頃に読み、巫覡(ふげき)との読み方だけで覚えていた本書の再読。巫覡と巫女が出て来たところで、丁度大学の一般教養で文化人類学的なアプローチを受講していて、古来部族間で巫女が果たした役割が(今では知るところの構造主義の捉え方と)同じ、と妙に納得した記憶でしたが、序で「民俗学や文化人類学とは違った……」と言い乍ら言及している領域ははっきりとそれらであるし、なら其々の大家には叶わない論考の気もします。現代は「吉本を読め!」ではないし、持て囃された当時が同氏の時代だったんだなぁと思います。(◎2023年・冬)2023/11/18
ケー
5
読書会課題本。 幻想を3分類してそれを遠野物語や古事記に当てはめて分析する語り口は哲学というより思想、批評。今の文芸批評の嚆矢と感じた。個人的には構造主義的な印象を受けたので割と入り込めて読めた。読みこなせているかはわからない。2023/08/13
die_Stimme
2
よるべき原典を『古事記』と『遠野物語』に限り、そこから個人の「自己幻想」、一対一関係の「対幻想」、より大きな社会の「共同幻想」というこれも最小限の概念セットで人間間の関係から国家の成り立ちまでを読み解く。むつかしいが、宇田亮一『吉本隆明『共同幻想論』の読み方』片手にようやく読み切れた。もう一度ぐらい読んでおきたい。2023/08/28