内容説明
1950年代のサンフランシスコ。テレビ販売店に勤めるハドリーの日常は、ある日狂い始める……。25歳のディックが書いた自伝的小説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
42
フィリップ・K・ディックは初読。自分が期待しているほどには評価してくれない世間。的外れな評価に、こんなはずじゃないと思い続ける疎外感は、大半の人が経験したはず。そのキツイ現れ方がスチュアート・ハドリーの場合だろうか。何をしても誰と会ってもどこへ行っても、自分というものが掴めない。そして右往左往する。あとは破壊あるのみ。やり切れない。どうか新生児のピートだけは巻き込まないでと願いながら読み進んだ。心の奥底には誰でもあるだろうと差別的な表現もたびたび出現し、何度も不快な気持ちにさせられた。2021/08/27
ふみふみ
12
50年代のサンフランシスコの生活、風俗に精神の病んだ主人公と著者の経験が色濃く反映された普通小説。恐らく執筆当時の書きたいことは余すところなく詰め込んだと思われる内容は勢いを感じさせ退屈せずに読めますが、一方で一向にテーマに近づかないこのボリューム、ダラダラ感は一体なんなんだという感も否めません。没後25年後の刊行も宜なるかなと思います。後、本書で驚いたのは訳者がジャーナリストの阿部氏であること。正直、小説より氏の解説(ディックのバイオグラフィー)の方が一読の価値がありました。2020/07/22
Kotaro Nagai
11
本日読了。1952年ディック23歳の時に書かれた幻の第1長編。といってもSFではなく普通小説。主人公のハドリーは25歳のテレビ販売店のセールスマンで、屈託を抱えて日々を送っている。後年ディックのSF作品には未来社会においての不満や屈託を抱えて下層に暮らす人物がよく描かれる。本作のハドリー、ファーガソン、マーシャといった人物にその原型を見る。普通小説とはいえ人物描写の筆致は後年の作品を垣間見ることに驚きを禁じえない。1952年当時の社会風俗の描写や固有名詞にピンと来ないが訳注があり助かる。訳文も格調高い。2021/03/11
roughfractus02
9
原題はVoices from the Street。凝った邦題から漢語の多い訳文に、著者のシンプルな英語の記憶と重なって違和感を持ちながら読むと、風景描写や主人公の仕草の場面に訳文の効力が増すのを実感する。まだSFを書いていない作者初めての長編小説に登場するTVセールスマンの主人公と妻子、新興宗教の黒人教祖、不倫相手の女性という人物設定は後のSF作品にもあり、自己とその環境を破壊する最後の場面もどこか馴染み深い。が、主人公の焦燥を作る50年代サンフランシスコの混乱と風景の流麗さは、この作品のものである。2020/07/17
記憶喪失した男
7
ディックの一般小説。ドライヴと日曜大工をする話だったな。2022/04/26