内容説明
耳を澄ませ。何かが聞こえる――。テノリネコが膨らむ音が。徘徊するネコビトたちの呟きが。貝殻プールのラッコの水音が。盗んだトウモロコシをゆでる熊のご機嫌な鼻歌が。そして、吸血鬼(バンパイア)の奏でる陽気なラグタイムピアノが……。混沌と不条理の中に、世界の裏側へと読者を誘う魅惑的な企みが潜む。デビュー作『レプリカたちの夜』で大ブレイクした鬼才による、異彩を放つ傑作オリジナル短篇集。(解説・杉江松恋)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
48
面白かった😆短編集の主人公達は不幸一直線なのに笑ってしまうのは他人事として見るからなのだろう、物語には教訓や学ぶことは一切ないし動物達はある意味不気味であるが見方を変えると哲学的位置にいるのかもしれない、短編集の愛して止まない動物達に祝福を捧げたい、得にネコビトには😸2024/09/19
Kanonlicht
45
著者の短編をはじめて読んだ。なんというか、ちょうどいい。全編にわたり持ち味である不条理世界が繰り広げられるのは相変わらずで、長編だと酩酊感が強すぎて一気に読めないのを、ほろ酔い気分で「次は何が出てくるかな?」と楽しめる感じ。読んでいて思ったのは、夢を見ている感覚に近い。見た目は現実っぽいんだけど、現実にはあり得ないことが起きて、でもなんか納得感がある。そんな世界を描くのがとてもうまい。「テノリネコ」「採って獲って盗りまくれ」が好き。2024/01/24
なつくさ
43
おもしろかったです。無茶苦茶やっていても成り立っているのがすごい。お気に入りは「テノリネコ」。大きな音を立てると体が徐々に大きくなるネコが登場。音を立てさせないようにする「わたし」と周りのやりとりが可笑しくて笑ってしまう。その笑い声はきっと物語からしたら天からの声みたいに大きいのだろう。むくむくと大きくなるテノリネコを想像し急いで口を閉じる。てめえ、読者、クソが!「わたし」が言うであろう台詞を想像しさらに、にやり。また、むくむくと大きくなるテノリネコの姿が目に浮かぶ。2023/08/23
Kazuko Ohta
43
無知な私は、“murmur”という英単語が存在することを知らず。そんなダジャレみたいな英単語を「まーまー」と書く、素敵すぎるセンス。環境汚染によって異形化した動物とか、見たこともない光景のはずなのに、想像の世界がどんどん膨らむのです。そのシュールさを今は笑っていられるけれど、もしかしたらそう遠くない将来、現実になるかもしれないなぁなんてちょっぴり恐ろしくもあり。伊坂幸太郎が推しているだけあって、伊坂作品を好きな人ならば、たぶん好みの範疇。この表紙のぬいぐるみがあればほしい。んー、こんなん家に居ったら嫌か。2020/04/15
デーカ
42
「レプリカたちの夜」から続けて本作を読んだので、この何とも言えない一條ワールドに戸惑うことなく入り込めました。短編だったので「レプリカ~」よりも読みやすい。作者は動物と音楽が大好きなんだろうなぁ。人間味溢れる、おもしろキャラクターたちに愛着がわきます。2020/04/19