内容説明
中世の地図、失われた大伽藍や城の絵図、合戦に参陣した武将のリスト、家系図……。これらは貴重な史料であり、学校教材や市町村史にも活用されてきた。しかし、もしそれが後世の偽文書だったら? しかも、たった一人の人物によって創られたものだとしたら――。椿井政隆(一七七〇~一八三七)が創り、近畿一円に流布し、現在も影響を与え続ける数百点にも及ぶ偽文書。本書はその全貌に迫る衝撃の一冊である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
325
「つばいもんじょ」というタイトルの読み方と、副題「日本最大級の偽文書」に、目はくぎ付け。NHKのBS番組にも取り上げられており、興味津々で手に取った。読んでよかった! 筆者は、なぜ歴史の開けてはならぬ「パンドラの箱」を開けることができたのか? その経緯を紐解く筆致は、まるで良質のドキュメンタリー番組を見ているよう。古文書に向き合う馬部さんの姿が目に浮かんだ。筆跡を変え、系図をでっちあげ、架空の絵図を作り上げる椿井政隆。その背景に、何があったのか? そこには、告発ではない、椿井に対する筆者の”愛”があった。2024/12/12
遥かなる想い
134
2021年新書大賞第3位。 偽文書作成に関わったという椿井政隆に焦点を当てた書である。身分上昇を図る富農が 企てる かつては 有力な武士だったと語る系図…ひどく日本的な偽文書は もしかしたら 全国に蔓延しているのかもしれない。 大阪枚方市の地域史に取り組んだ 著者の苦労がしのばれる…そんな書だった。2021/03/27
へくとぱすかる
110
三崎律日『奇書の世界史』で知った椿井文書の参考文献の著者による詳論。古文書がニセ物なら、そこから組み立てられた歴史の根幹が崩れる。マユツバさの目立っていた「東日流外三郡誌」以上に影響は大きいだろう。地方史であるだけに、町おこしに活用されると、簡単に取り消せず、地元としてはウソでもありがたいという姿勢となり、学問的真実が通らなくなる恐ろしさ。偽文書は作られたときから、すでに利害関係の中にあること、紙も墨も新しいのに虚偽を見抜けなかった構造を、歴史の研究者は知っておくべき。そして椿井政隆は研究に値する人物。2020/05/29
HANA
82
椿井文書とは江戸時代の国学者椿井政隆の作成した一連の偽書の意。偽史、偽書というと『竹内文書』や『東日流外三郡誌』のような荒唐無稽ながらどこか浪漫を感じさせるものが第一に思い浮かぶのだが、本文書はその逆で地味で地域密着型の偽書となっている。本書はその作成方法からどのように流布したか、受容の背景にその影響、現在までの研究者の視点と、その全貌が伺える一冊となっている。特に受け入れられた背景、疑いつつも自分たちに有利になるから受容する、同業者等への義理として受け入れる等は、現代の人文学にも通じる部分があるかと。2023/11/08
もりくに
75
最近は「偽物」流行りで、「贋作」と言えば、絵画などを思い浮かべるが、この本は、「偽文書」の告発(?)「歴史学」は、事物や「古文書」で、「史実」を積み上げていく学問だろう。だから、その「古文書」の真贋の見極めは、最も歴史学者が神経を使う所だろう。一つ、二つなら、影響は少ないだろうが、数百となると、話は違う。しかも、作成者は一人(!)「椿井文書」とは、山城国相楽郡椿井村(京都府木津川市)出身の椿井政隆が、依頼に応じて贋作した文書の総称だ。近畿一円の文書ばかりでなく、中世の地図や、失われた大伽藍や城の絵図など。2025/01/26




