内容説明
著者はこれまで300人を超える元受刑者を取材してきた。そのなかで、近年顕著になってきたのは、高齢の受刑者たちである。塀の外の孤独で不安定な生活より、安全な刑務所を志願する老人たちが増加しているという。受刑者に占める65歳以上の割合は4.8%、数にして10年前の1.2倍となった。これは、刑務所の老人ホーム化なのか。再犯者率の増加、社会復帰・更正への対策は、ようやく進められているところだが、それだけでは解決できない、高齢化社会ならではの問題と言える。人生100年時代と呼ばれ、後半戦を健康で豊かに過ごそうという多くの高齢者がいる反面、社会から見捨てられ、置き去りにされる老人受刑者たち。刑務所、更生保護施設、支援組織を取材、高齢受刑者・出所者本人へのインタビューを行い、漂流する老人たちの現実に迫ったルポルタージュ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
104
超高齢社会に比例するように老人の受刑者も増えている、この本はそんな受刑者との対話や受刑者を取り巻く環境などが書かれている。短期の刑とは違い長期や無期で入所している受刑者はこの先どうなるのだろう。以前ホリエモンの本で読んだが受刑者が受刑者の介護をしなければならない状況が深刻のようだ。この先もっと深刻になったときは違う刑務所から介護のために受刑者が派遣されるような事態も起こるのかもしれない。日本赤軍の重信房子氏は医療センターで抗がん剤による治療を受けながら服役していることを知った。図書館本2020/12/17
ゆみきーにゃ
91
受刑者、元受刑者のお話が沢山載っていたのが良かった。介護が必要な受刑者が増えている現実を全く知らなかったので衝撃のルポでした。全うに頑張って生きている人より豊かな医療、介護。しかも全て税金。色々考えさせられます。2021/04/12
gtn
31
不遇な人生の果てに、刑務所を福祉施設として利用せざるを得ない高齢者が一定存在する。彼らは、ほとんどが累犯しているので、窃盗や食い逃げ等微罪で入所することができ、本来の福祉施設のように順番待ちする必要はない。案外、社会復帰を望む者が多いのは救いだが、現在、その願いがそのまま叶えられるような環境にない。著者は犯罪、入所、出所、再犯の繰り返しを"負のスパイラル"と呼ぶ。当事者はそれを悲劇と思っていないことが悲劇なのかもしれない。2020/08/17
ぽてち
31
タイトルに惹かれて図書館で借りたが、巻末の著者紹介文を見ると、「1941年生まれ」と書かれていた。老人受刑者を取材する側も老人だったとは……。だからと言うわけではないが、週刊誌ネタのような勢いはなく、落ち着いた筆致で安心感はあった。そして安住を求めて再犯を繰り返す高齢受刑者や、介護福祉士化する刑務官など、驚きの実態を知ることができ有意義な読書だった。2020/07/31
ネギっ子gen
14
高齢者が何故、「犯罪者」になってしまうのか、その現実の姿を「塀の内側から外側」(更生保護施設、地域生活定着支援センター等)を取材し、出所者の生の声も聞き取ったルポルタージュ。【刑務官の話】<高齢受刑者は増加していますが、反面、刑務官の定数は増えずに、仕事量は増えるばかりで高齢者の介助に時間を取られてしまいます。刑の執行が刑務所の役割ですが、要介護者の処遇は執行と同時に「健康や安全」といった面からも一般受刑者よりも気を使うんです。/ここが「介護施設」と呼ぶだけの設備と人員>を揃えていないと。そりゃそうだ。⇒2020/06/15