内容説明
嘘つきは教師か? 生徒か?
SNSに投じられた学校代表の「読書感想文」盗作疑惑。
渦巻く疑心が人の心の暗鬼を呼び覚まし、一人の教師を奈落の闇に突き落とす。
エンタメ小説の鬼才が教育現場の圧倒的リアルに迫った学園震撼サスペンス!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
285
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第28弾、月村 了衛は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。タイトルはどう言う意味かと思いつつ読め始めました。人は死にませんが、正に人の心の奥の暗鬼が跋扈する大変厭な気持になる学園イヤミステリでした。しかし読書感想文の注目度がこんなに高い学校は、現実に存在しているのでしょうか? 2020/05/04
しんたろー
225
月村さんの新作は「『機龍警察』と同じ著者?」と思う程、リアルなイヤミスでビックリした。中学校教師・汐野の主観で進む物語は、読書感想文の盗作疑惑から始まって、生徒間の妬み僻み、教師間の歪な関係、保護者間の対立など人間の闇を様々な形で浮き彫りにしている。二転三転する流れも面白く、似て非なるものだが湊かなえさんの『高校入試』を思い出した。汐野の野心は共感を呼ばないが気持ちは痛いほど判るし、周囲の大人たちの言動にもゾッとしながら身につまされた。著者の幅の広さに改めて感服…が、それでも『機龍警察』の新作を熱望する♬2020/08/12
いつでも母さん
204
人の心に巣食うのは鬼か蛇かー邪なる闇が終始綴られて月村さんが、これでもかと私の心を暗澹たる思いにさせる。職員室に教室、PTAや行政・・お願い、真っ当に生きる人間が居ると誰か教えて下さい。2020/05/14
のぶ
139
月村さんはこんな本も書くんだ、というダークな学園サスペンスだった。物語は中学2年の生徒が読書感想文のコンクールで受賞したところから始まる。ところがこれが盗作だという疑惑がSNSで校内に流れ出す。この話が全編を貫くが、この疑惑に対応する教師やPTAがドタバタ奔走する。他にもこの学校では移転等の問題を抱えていた。盗作かどうかを調査する過程で人間のエゴのようなものがむき出しになり、様々なドラマが描かれる。陰から生まれた悪意が一人の「いい先生」を奈落に落としてゆく姿が、悲しいものを感じさせた作品だった。2020/05/20
とん大西
125
ざわつくのは読後の余韻だけではない。初手から胸さわぎがして終始ドヨドヨしてざらついた本作。SNSに端を発した駒鳥中での読書感想文盗作疑惑。疑心が疑心を招き学校統廃合の政治問題にまで波及をゆるす教育現場。ギスギスした教師たちの距離感に息が詰まる。我が身のことしか考えない権威への妄執者たちに嫌悪感だけがつのる。そして殺伐とした…。善人はいない。されど全て悪とも言い切れない。汐野をはじめとする愚かで憐れな彼らのエンドロール。渇いた読み応えはむしろ期待を裏切らないものだった。2020/07/05