内容説明
洒脱で晴朗なおしゃべり.出世作となった「暢気眼鏡」以下一連の貧乏ユーモア小説から,身辺な虫の生態を観察した「虫のいろいろ」,そして老年の心境小説まで,尾崎一雄(1899-1983)の作品には一貫して,その生涯の大半を過した西相模の丘陵を思わせる爽やかな明るさがある.代表的な短篇15篇を編年順に収録.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
288
第5回(1937年上半期)芥川賞受賞作。本来は9つの連作短篇からなる。典型的な私小説であり、赤貧の中で内縁の妻、芳枝との生活を綿々と綴る。こうした筆法からすれば、この頃の芥川賞には何らかの意味での斬新さが求められてはいなかったかのようである。もっとも、作家本人は、既にプロの作家である自分が今さら新人の登龍門たる芥川賞なんてと、不満だったようで、その意味では「物書き」としての矜持と自覚を強く持っていたのだろう。当時の読者たち(とはいっても、文壇の身内的な気もするが)にとってはともかく、今読むと退屈である。2017/03/11
カブトムシ
32
「暢気眼鏡」他で、第5回上半期(1937年<昭和12年>)の芥川賞を受賞した。「虫のいろいろ」は代表作で、1948年(昭和23年)2月に「新潮」に発表された。4年間寝たきりの生活を続けている「私」。身の回りに現れて来る蜘蛛(くも)、蚤(のみ)、蠅(はえ)の姿と自分とのやり取り。更には、娘との「宇宙の大きさ」の会話。師の志賀直哉の「城の崎にて」の系譜に属する小説である。録音テープに志賀直哉へのインタビューが残っている。創作について、いろいろ質問している。志賀直哉の住んでいる奈良へ転がり込んで、世話になった。
michel
22
★4.2。芳兵衛こと妻の芳江との、赤貧の新婚時代を描いた私小説。貧しさに暗さがないき、その上で暢気眼鏡を掛けて生きることの人生観が染み入る。連続短編私小説とはいえ、単に個人的なことを綴るだけじゃない。それぞれの短篇において、作者の松や虫たちへの柔和な視線に、人間性が表れている。2021/03/11
大粒まろん
14
軽い読み口。ダメダメな文士の私小説。菊池寛氏が選評で、仰れた。「僕としては朗らかな貧乏小説として、一種の風格のあるのを選んだのである。まさにそういう感想です。為事だからとこちらを振り回すのだから、暢気でなければ、やってられない笑。2023/06/06
Kotaro Nagai
14
本日読了。昭和8年の芥川賞受賞作「暢気眼鏡」から昭和57年の「日の沈むな所」までの短編15編を年代順に収録。すべて自身をモデルとしての作品で、私小説として読む物もあり、エッセーのような作風もある。戦前の作品は一回り以上年下の妻を愛情を込めて描いた作品が微笑ましく、大病を患っている時期に書かれた「虫のいろいろ」「痩せた雄雞」などは、するどい観察眼を昆虫や動物に向け、晩年のエッセー風の作品では老境の境地を自然の風景と重ね、どの作品も飾らぬ率直な文章が心地よい。2020/12/13
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