講談社現代新書<br> 「自閉症」の時代

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講談社現代新書
「自閉症」の時代

  • 著者名:竹中均【著】
  • 価格 ¥979(本体¥890)
  • 特価 ¥489(本体¥445)
  • 講談社(2020/05発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065197066

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内容説明

近年、「自閉症」について多くの書物が書かれ、論じられるようになっています。これは、21世紀になって突出してきた現象で、20世紀にはなかったものです。しかもこれは、日本に限った話ではないのです。
著者は、21世紀という時代の1つの特徴が、この「自閉的傾向」の突出化には現れているのではないかと考えています。その1例に伊藤若冲のブームがあります。前世紀まで若冲は「奇想の画家」として、美術史においてはアウトサイダー的な存在に過ぎませんでした。ところがその彼が、今では昨今の「日本美術ブーム」を引っ張る存在になっています。あるいは、『君の名は』『天気の子』が立て続けに大ヒットになったアニメ作家の新海誠。彼の作品もその「自閉症的」傾向が初期の段階からしばしば指摘されていました。
この2人に共通するのは、ディテールへの過剰なまでのこだわりです。それゆえに画面は異常なまでに高精密になり、と同時に非常にフラットなものになります。一言で言えば、非常にデジタルな感じがするのです。デジタルとは、完璧なコピーと同一なものの繰り返しが可能になる技術ですが、この「高精密」で「完璧に同一なもの」の繰り返しこそは、まさに自閉症者が大好きなものです。現代アートに革命を起こしたアンディー・ウォーホールを早い例として、「ミニマルアート」と呼ばれるものの現代美術、現代音楽における流行も、この同じ時代の「好み」に即したものなのではないでしょうか。
そしてこの時代精神をもっとも端的に表すのが、コンピュータの存在です。開発の祖に当たるチューリング、ノイマンから始まって、スティーブ・ジョブスやフェイスブックのザッカーバーグなど、IT、AIに関わる科学者、技術者に「自閉症的傾向」が強いことは、つとに指摘されている通りです。というか、そのような人たちの存在があってこそ、コンピュータ的なものは、ここまでの洗練を見たのです。いまや「デジタル的なもの」は、否応もなく21世紀人の感性の基盤になった感があります。とすればその底に自閉症的な美意識が伏在しているのは、むしろ当然ではないでしょうか。
本書は、上記の視点のもと、21世紀という時代そのものの「自閉症的傾向」を明らかにするものです。

目次

プロローグ
第1章 自閉文化とは何か
第2章 空間
第3章 反復
第4章 機械
第5章 高精細・パラドクス・ゲーム
第6章 奇人たちの英国
第7章 自閉症のアメリカ
第8章 自閉症と近代
第9章 PrimaryとPrimitive
エピローグ
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

またの名

7
周りの人々が内面心理の機微にこだわるのを無視して空間的な痕跡のみを探る、人間的全体性という森を見ないお陰で細部の木に気づくような名探偵ホームズ。「機械になりたい」と述べ大量生産品をひたすら反復する芸術家ウォーホルに、数学的な秩序で構成されたと言われるバッハ音楽を好んで生演奏より録音機械の中に響かせた演奏者グールド。そして数学者キャロルを産んだ英国的ファンタジーと米国発デジタル機器が結びつき展開する、現代の広大なゲーム空間。フロイトを援用し、自閉症は二次的逸脱ではなくむしろ人間において一次的ではとさえ議論。2022/11/15

manabukimoto

7
#Netgalley 自閉症が「発見」された20世紀を経た今、自閉症的なものの新しい考察。 伊藤若冲からグレン・グールド、白鯨のエイハブ船長から新海誠作品まで、古今東西「自閉症的」な人々の列記。反復を好み、不可逆的な時間よりも可逆的な空間に親和性が強い。ソナタ形式より変奏曲にはなるほどと思った。 最も興味深かったのが縄文人と自閉症の見立て。現代日本人のDNAに12%ほど残る縄文人気質。この12%という数字は自閉症の人々の割合と近いという。 特異でなくプリミティブな存在という位置づけ。なるほどと膝を打つ。 2020/05/17

Asakura Arata

5
奇人変人図鑑のようなまとめ方が、自閉傾向っぽい。自閉傾向の人たちが人類を変化させてきたのがよくわかる。しかしその変化させた世界に適応するのが大変だったのが、またより戻しがきているという感じか?最も自閉症にもいろんなタイプがいるからなあ。2024/10/07

Akiro OUED

4
反復作業によるモノづくりを特徴とする第二次産業が近代化をリードしている時代は、自閉症者にとって居心地が良かったゆえ、20世紀には自閉症という観念が言語化しなかったという分析、乱暴だが面白いね。国民の気持ちを理解できない自閉症者を首相に据えた日本人の実験精神に拍手。佳書。2024/06/25

ひつまぶし

3
自閉症を手がかりとした現代文明論のような試みなのだろうけど、どうなのか。個々の事例を自閉症という観点から並べると、なんとなく共通点があるようにも思えるが、最後のあたりになると、状況証拠で議論をふくらませすぎではないかと思う。人間性のバリエーションからすれば、大きくいくつかの要素の綱引きのようにして社会が構築されることはありそうだがけど、それを自閉症という単一の要素に集約して語るのは、試みとしては面白いかもしれないが、ちょっと無理があるのではないか。また、やっぱり自閉症そのものもの実態もよく分からないかも。2024/10/08

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