内容説明
本書の狙いは、オオカミ人食いの冤罪を晴らすこと。濡れ衣の元凶は元禄飢饉に窮した幕藩体制下の「大嘘」。古代シュメールの箴言「嘘をつけ、然る後、真実を言え。それは嘘と思われるだろう」。もうこれは卒業しましょう。虚言を繰り返すコピペ出版はおしまい。いつまでもオオカミを信じないで、その復活を逡巡していると、とんでもない災禍を招きます。シカ荒れによる自然破壊、山地崩壊、大洪水、そして豚コレラ流行も。どれもこれも生態系の有力な捕食者オオカミが絶滅したままになっていることが原因です。オオカミに関する誤解を解いて、オオカミ再導入を一日も早く実現しましょう。オオカミ復活の必要性については良く分かっているのだが、人食いが心配だからとためらっておいでの方は是非とも本書のご一読をお勧めします。
目次
まえがき
Ⅰ 論考の材料としての出版物と古文書
Ⅱ 古代日本人のオオカミ観
1 オオカミは怖い存在? 人食いは犬では?
2 古代人とオオカミとの希薄な関係
Ⅲ 平安時代から室町時代のオオカミ観
1 宮廷貴族はオオカミに無関心
2 民衆はオオカミが好き
3 オオカミと仏教界
4 神道と仏教 二重構造のオオカミ観
5 中世の戦乱と飢饉
Ⅳ 近世:オオカミ冤罪の江戸時代
1 オオカミ冤罪と生類憐みの令
2 諏訪高島藩での狼荒れ
3 元禄飢饉、生類憐みの令と狼荒れ
4 牛馬の被害も冤罪
5 イヌを駆除してオオカミとは
6 高すぎるオオカミ駆除褒美金
7 狼害、実は身売り、逃散
8 一七・一八世紀の江戸社会と諏訪高島藩のオオカミ人食い冤罪化要因
9 加賀藩の狼害
10 弘前藩と盛岡藩での狼荒れ
11 弘前藩と盛岡藩のオオカミの捕獲記録
12 尾張藩の狼害
Ⅴ 江戸時代:狂犬病の侵入とオオカミの凶獣観の強化
1 江戸時代、生物科学発展の遅れとオオカミの冤罪
2 オオカミに蹼はない
3 狂犬病の侵入
4 文芸による「オオカミ人食い通念」の強化と拡散
Ⅵ 近代:明治以降
1 外国人二人のオオカミ記録、そしてアイヌのオオカミ観
2 オオカミに関する民俗学
3 「赤頭巾ちゃん」
4 「オオカミ少年」と「三匹の子豚」
5 ロシア革命前後のオオカミ観
6 オオカミ観とオオカミの絶滅
あとがき