内容説明
五年の武者修行から帰ってみれば……。
直木賞作家が贈る濃密な傑作時代小説集。
寛政の世、浮世離れした武者修行から五年ぶりに帰国した男を待っていたのは、美貌の女が仕掛ける謎――。
表題作ほか、二十俵二人扶持の貧しい武家一家で、後妻が生活のため機を織る「機織る武家」、新田開発を持ちかけられ当惑する三十二歳当主を描く「沼尻新田」。
閉塞した武家社会を生きる人間の姿が鮮やかに立ち上がる傑作三篇。
※この電子書籍は2017年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
79
登録本1700冊目は青山文平さん。武士という身分だけでは暮らしが立ち行かない時代の三編「機織る武家」「沼尻新田」「遠縁の女」。いずれも長編のような読み応えだった。まだ著者二冊目だが、展開が毎度予想できない。読み終わるまでどういうお話なのか分からないところがとても新鮮。次はどの作品を読もうか楽しみだ。2022/05/10
タイ子
77
本作の単行本の表紙は女性のオールヌードが描かれているのに文庫本になると全く様相が違う表紙絵だったのでちょっと驚く。この意味するところは読んでみないとですね。3つの中編からなる作品集。武家社会の暮らしの厳しさとそこに住まう家族の想い。タイトルの「遠縁の女」が一番面白かった。父と叔父から武者修行に出るよう命を下された男が、父の訃報を聞いて5年ぶりに帰国。そこで聞かされた思いもかけない国の事情と、親友の切腹。そして、想いを抱いていた遠縁の娘が語る驚愕の事実。武家社会ではこういうこともあり得るのかと切なく納得。2020/06/14
がらくたどん
65
愛読中の漫画に描かれた北海道アイヌの機織り風景から「地機」の描写を確かめたくて。結局楽しくて全編再読。「機織る武家」本作中一番地味だが好きな話。無気力な夫と気位のみで生きているような姑に囲まれ居場所のない妻が窮乏する家計のために機を織る。もはや流行遅れの「地機」のはずが。身に沁み込んだ技と知識は己の最後の芯となる。粉骨砕身の末の立身出世の本当の目的が少年のような柔らかさと知らされる「沼田新田」父から時代遅れの長い武者修行に出された青年が父の世代の価値観と自分の費やした時間を蹴飛ばす「遠縁の女」涼風が吹く。2022/06/14
チャーリブ
47
再読。3つの中編が収録されています。「機織る武家」は、貧乏武士の妻の縫が機織りの才能を開花し、やがて一家を支えていく話。「沼尻新田」は、百石取りの家の嗣子・柴山和巳がある目的のために一統を率いて新田開発に乗り出していく話。「遠縁の女」は、父親の命で藩を離れて武者修行に出る若侍・片倉隆明の話ですが、前半の武芸の話が面白かっただけに、後半の男女のわりない関係にはちょっと違和感を感じました。3作とも女性の影響力の強さという点で共通点があるかもしれません。確かな時代考証と人物像、植物描写を堪能しました。○2023/09/18
タツ フカガワ
42
斜陽の武家社会を背景にした全3話の中・短編集で、いずれも終盤の意外な展開が面白かった。なかでもよかったのが「沼尻新田」。藩が奨める沼尻新田は、自己負担で開墾し、そこで収穫した作物には永久に賦課しないというが、そこは海岸近くの砂に覆われた不毛の土地だった。そこへ柴山和己という藩士が開発を申し出る。ちょっとファンタジー色さえ感じた一編で、読後の余韻も爽やかでした。2021/05/06
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