内容説明
オール讀物推理小説新人賞を受賞した幻のデビュー作「キッドナッパーズ」と書籍未収録作品で編んだオリジナル短篇集!
「大声をだすな」
宅配便を装って侵入してきた男は、健次郎の腹にナイフを突きつけてきた。
平凡な日常に突如押し入ってきた犯罪者は声が甲高く、背が低く、野球帽をかぶった……小学生と見まがわんばかりの中学生!?
少年は「これは誘拐だ」と断じた。だが被害者は健次郎ではなく犯人であるはずの少年自身だという。
摩訶不思議な誘拐事件は二転三転し、ラストで意外な結末が待っていた!
オール讀物推理小説新人賞受賞の表題作ほかを6篇収録。
解説・宇田川拓也
【オール讀物推理小説新人賞「選評」から】
「これこそ逆転に次ぐ逆転の連続で、着地がどうなるのかまったく予想できなかった。」(高橋克彦委員)
「何とか読者を面白がらせ、驚かせようとする創意工夫が、今回の作品に結実した」(宮部みゆき委員)
【収録作品】
キッドナッパーズ
目刺し
架空の風景
十字架ジュース
ごとんがたん
べつばら
おなじ本でも
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダミアン4号
66
初っ端から引き込まれる!宅配便の配達員を装って押し入ってきたのはパッと見た目“小学生”って感じの華奢な“中学生”(本人弁)…震える手でナイフを突き出し「今から言う番号に電話をかけろ!!」自分が誘拐された事にしたい中学生と失業中のふて腐れた社会人…事件に関わらない様、抵抗する(相手は貧相な体格の男の子ですからね)事も可能なのに、何故か“狂言誘拐”の片棒を担ぐ事にした主人公…それにはワケが(笑)さぁこの事件、どう転んでいく?短編集なのであっという間にエンディングを迎えてしまうのですが、とにかく面白かった(笑)2019/04/08
ぽろん
38
7篇の短編集。表題作のキッドナッパーズが、一番良かった。失業中の青年の家に入った強盗が意外な顛末に愉しめた。2019/06/14
sayan
28
十字架ジュースは、ギュッと短編らしさが詰まった魅力的なストーリーで、清々しい読後感を経験できた。物語の時間軸は様々に移動する、ややもすると雑な展開で強引な結末を想像しがちだが、そんな心配は不必要だった。学生と教師をつなぐ謎設定が秀逸で、その謎を解き明かしていく過程とその後が温かい。全部で7つのストーリーが本書に収められているが、個人的には何篇かは相性が悪かった。特に、鉄道系の話はどうにも…。「家康、江戸を建てる」の著者だよなと、歴史小説がメインかと思ったら、推理小説がメインとの事。他の作品も読んでみよう。2019/10/12
そうたそ
18
★★☆☆☆ 文庫未収録の作品を収めた文庫オリジナル作品集とのことだが、著者の初期作が多く、最近のものと比べるといまいちな部分はあるし、何より今まで未収録であったことが故の、著者の他の作品と比べると、どこか数段落ちるような印象のあるものが多かった。著者が好きならともかく、あえて読むほどの作品があるとは思えなかった。2019/03/10
きょん
15
表題作は、勢いはあるけどアッと驚く仕掛けや展開もなくて自分の好みではなかった。後半の言葉や知覚をテーマにした短編の方が面白い。2019/01/30