内容説明
17世紀フランスで議論となった「ジャンセニスム」の歴史――。
近世フランスに巻き起こった最大の宗教論争と、その背景にある錯綜した政教間の力学を明らかにし、論争そのものの思想史的意義を明確にする。著者は、フランスでも単著を刊行する実力派。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
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人間の自由意志の範囲を限定して神の恩寵を最大化する点でカルヴィニスムと似ているジャンセニスムだが、真っ向からカトリック教会に叛旗をひるがえす前者と違って、あくまでも教会の内部にとどまりながら、教皇の不可謬性に疑問を投げかけて、表向き服従しながらも、個人の良心の自由を守り通そうとするジャンセニスムは、教皇にとってもフランス政府にとっても、より一層、扱いにくい目障りなものだっただろう。ナントの勅令による寛容主義から1世紀後の勅令廃止の不寛容にいたる流れの中で、政権も教会も徐々に硬化していく過程がよくわかった。2020/06/18




