内容説明
「障がい者を見せ物にするな!」
そんな野次と戦いながら怯むことなく信念を貫いた医師・中村裕さん。1964年の東京パラリンピックの成功は、障がい者の心と身体を明るく元気にしただけでなく、自立と就労に導いた。日本が共生社会への第一歩を踏み出した瞬間を知った。
――増田明美さん(日本パラ陸上競技連盟会長)推薦
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リハビリテーションの一環として始まった試みが、人々の人生を変えていった。知られざる大会と、戦後の障害者をめぐる社会を描くノンフィクション。
満足な車いすもなく、下半身の自由を失った人々は家や病院にこもるしかなかった昭和半ばの日本。脊髄損傷者の生活向上におけるスポーツの効用に着目し、厳しい反発を受けながらも「東洋初の国際障害者スポーツ大会」の開催に尽力した一人の医師がいた。大会を通じて浮き彫りになったのは、欧米に比べて立ち遅れた、日本の医療と福祉だった。社会復帰し、生活を楽しむ外国の選手を目の当たりにした日本選手の胸に去来したのは「仕事がしたい、人生を謳歌したい」という思いだった――
ボランティアやバリアフリーという言葉もまだ知られていなかった時代に、共生社会へつながる最初の扉を開いた人々の奮闘を、当時を知る関係者らへの取材と貴重な証言で描く。
目次
プロローグ
第1章 第一歩
ストークマンデビルの「秘術」/手術よりスポーツ/カネとモノがなくても
第2章 先駆者
パラリンピックの父/障害者スポーツの可能性/車いす競技会の誕生
第3章 開催へ
常識との戦い/障害者のオリンピックを東京で/「まずは騒がれなければならない」/準備期間は二年
第4章 選手たち
交通事故で別府へ 須崎勝巳/過酷な青少年期 近藤秀夫/ドイツの炭鉱から 桑名春雄/リハビリとしての卓球 渡部藤男/東の代表 箱根療養所/唯一の傷痍軍人 青野繁夫
第5章 幕開け
開会式/皇太子夫妻の支え/「運動会」
第6章 大会
競技と会場/海外勢との差/健闘と惨敗/混乱の運営/出場者の記憶
第7章 支えた若者、撮った若者
語学奉仕団の活動/カツドウヤ気質が残した映画
第8章 新たな日々
外国選手の明るさ/職業人としての自立/「見られてもかまわない」/当事者が先頭に立つ福祉/仕事も遊びもスポーツも
第9章 さらなる前進
「太陽の家」設立/「フェスピック」開催
第10章 灯を受け継いだ者たち
障害者アスリートの草分け 星義輝/競技者の意識 成田真由美・鈴木徹/境界を超える存在 マルクス・レーム
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