内容説明
三十歳の美しいコミックス作家・川村リリカと、同い年の敏腕編集者・野崎百合子。「俺」「お前」と呼び合う可憐な二人が、喫茶店で、イタリアンで、カツカレーの店で、新作の打ち合わせをする。「それはそのままタイトルになるね」「なるね。メモしとこう」。物語はどのように生まれるのか。創作の秘密が垣間見える連作集。
〈挿画〉牛久保雅美
【目次】
きみはミステリーだよ
いまのような密会の時間
荒野は誘惑する
スクランブルド・エッグス二個をかきこむ
苦手なものはありますか
豆腐とケチャップで微笑する
梨を切ろうとしたとき
オーガズムと自分の現在
裸でプッタネスカ
青い色にからめ捕られて
フレンチフライドポテト
雨のコカコーラ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
34
若い頃は集中的に読んだことのある作家さんですが、この本は合いませんでした。文体が生理的に合わないので1章を読んだだけでギブアップ。2021/04/25
踊る猫
26
これはかなり評価が割れる問題作なのではないか。オトナ向けに書かれたライトノベルのようでもあり、ファッショナブルな風俗小説の体裁を取り繕った日本への警告でもあるようだ。団塊やロスジェネが抱える問題に触れて、しかし強固で透明な、悪く言えば汗の匂いのしない文体で蜃気楼のような出版業界を(むろん、こんな清潔でホワイトな「ギョーカイ」など存在しようがないのだが)描く。片岡義男は鋭敏に時代を読む作家だが、しかし自身の小説のスタイルまで変えようとはしない。これは貶しに聞こえるだろうが、ページを繰らせない退屈さを守り抜く2020/08/03
しゅう
16
片岡義男の作品を読むのはこれで2回目だ。彼の長いキャリアにあってこの小説がどのように位置付けられるのかはわからない。この連作集はストーリーがあるようでないような、と思いながら読んでいて途中で気付いた。物語が外部と内部の二重構造になっていて、つまり外部にはコミックス作家川村リリカという主人公がいて、内部には彼女が描くコミックスのストーリーがちゃんと存在しているのだ。だからリリカの親友であり編集者の百合子はいつだってリリカのストーリーの聞き役に回る。物書きになりたい人が読むにはいい小説かもしれない。2020/11/14
tetsubun1000mg
13
タイトルとイラストでこの本を選んだ人は片岡さんの略歴を知ってビックリしたんじゃないかな。 私も読み進んでいくうちに若いモデルの様なコミックス作家の女性と同い年の女性編集者と打ち合わせしながら題材を練っていく設定。 二人とも同じように美しく描かれるが、片岡さんの小説に登場するタイプの女性を主人公にしたのに気が付く。 主役リリカが喫茶店を訪れ会う人や目にはいった人、風景をヒントにして小説の題材を作っていく過程は、過去に男性作家主人公で小説を書かれているのと同じ書き方。 今だ衰えない感性に驚かされる出来栄え。 2021/02/10
ズー
13
表紙が好きなイラストレーターさんでかっこよかったので読んでみた。所々入る挿絵も素敵。が、まさかの話自体は合わなかった。面白くないことはないんだけど。まず出てくる女性が終始男言葉なのと、このシチュエーションにおける百合子っていう名前とか。やたら裸で過ごしてるところとかを男性がこの話を書いてるのかと思うとなんか…😰 でも80歳の男性が書いてたとはびっくり。この物語はかなり今風のイラストに救われてると思う。2020/07/03