内容説明
鉄道ファンの浦本は廃線前の撮りおさめのため、北海道・留萌本線に乗車した。だが発車後まもなく発生したハイジャック事件に巻き込まれ、乗員乗客4名とともに車両内に閉じ込められてしまう。前代未聞の事態に頭を悩ます道警の安積らのもとに、犯人から連絡が入る。「道議会議員の河出を交渉役に、身代金として1億7550万を要求する」犯人はなぜこんな事件を起こしたのか? 鉄道を愛する著者がおくる、郷愁のミステリ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TakaUP48
47
「鉄ちゃん」のための小説?線路廃止を追いかける「葬式鉄」というのを知った。話は、廃線間近の留萌本線の1両気動車キハ54のハイジャックから始まる。列車内で人質を押さえる者。道会議員への身代金の要求電話をする者。振込先は長崎。裏で糸を引く者がいるのでは?車利用社会による留萌羽幌道路建設。それに絡む土建屋利権。利用者激減によるローカル線廃止続出の現状。時代の流れを捉えた話だ!と思いきや、田舎繋がりが凄いなあ~。「鉄ちゃん」ならではの話は、留萌本線のみで走っていた地味で自慢のD61。さよなら、留萌本線…。2020/12/01
あっ!chan
46
廃線間近の留萌本線で起こった電車ジャック、そこで犯人が訴えたかったことは...よく練られた犯罪計画、上手くすれば完全犯罪も可能と思われた完成度だったが、そこには関係者たちの少年時代の純真な想いと切ない思い出、そしてまっすぐな正義感があった。建設談合の話も絡めてあったが、そこはちょっと...という突っ込みどころもあるけど、情景描写なんかはすごくリアルで楽しめました。なぜなら私自身留萌本線の幌糠駅近くで4年間ダムを造っていて何度も留萌本線に乗ったからかもしれない。まさにタイトルにつられて手にした作品。2023/01/02
papako
46
いつも鉄道旅の番組を見ているので、電車の雰囲気とか廃線の雰囲気がリアルに感じられた。彼が主人公かと思っていたら、違った!どちらかと言うと群像劇。炭鉱と鉄道と北海道。なかなか面白かった。ラストの対面がいいな。2022/06/30
ミツツ
38
留萌本線、今年の夏に初めて乗りました。まさかそこで事件が!?と、前のめり的に読み始めコトの次第が明らかになると、鼻の奥がツーンとなってしまいました。読み終えて目を閉じると、山の中をどんどん突き進みトンネルを通り侘しい駅舎を後にする…そんな車窓の風景が思い出されます。2020/10/20
あつひめ
37
北海道在住、そして炭鉱のあった町が嫁ぎ先の私としては胸がチクチク。炭鉱が栄えていた時のことは話でしか知らない。でも、炭鉱町がどんどん自然の風景に戻っていく様子をこの30年見ているだけに、この小説は小説であって現実でもあるような錯覚に陥らされてしまった。人の心にいつまでも灯り続けるふるさとの灯。線路は草に覆われていく。残されてそこに住む人たちもまた切ない思いを抱いている。最初のページにある路線図を見て、点訳するとしたらどう説明するかなどの勉強にもなった。2022/07/14
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