内容説明
アメリカに渡ったイフェメルは、失意の日々を乗り越えて人種問題を扱う先鋭的なブログの書き手として注目を集める。帰郷したオビンゼは巨万の富を得て幸せな家庭を築く。波瀾万丈の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ザビ
16
「ミシェル・オバマがナチュラルヘアでいくと決めて縮れ毛やカールを巻いた髪でTVに出ることを想像してみよう。彼女はめっちゃ格好いいけど、オバマは間違いなく無党派層の票を失う」敬語を使い分ける文化が日本に根付いているくらいの感覚で、アメリカでは人種ごとの社会的地位の差が生活に深く染み渡っているのか。「人種は生物学ではない。人種は社会学なのだ。そして人種差別が全くもってバカげているのは君がどう見えるかだから」このシンプルな言葉が印象的。恋愛を通して社会への疑問をストレートに浮き彫りにした小説は初めてかも。→2021/11/23
まこ
15
ヘアサロンがアメリカ寄りの考えになったイフェメルの象徴だとして、6章まではそうなるまでを今のイフェメル交えてどう変わったか分かり易い。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカとお互いに対する憧れと現実のギャップに戸惑うイフェメルとオビンゼ。オバマ元大統領やフィクションに対するイフェメルの考えの向こうには作者のそれを感じる。2022/09/07
イシザル
13
お笑い理論の一つ。「緊張」と「緩和」。移民の苦労をしっかり書いてうまく「緊張」させてるから「緩和」する辛口ジョークを入れて笑いをとる。「緊張」の作り方や辛口を入れる箇所が絶妙な位置なんだろう。だから全米批評家賞は、当然だろう。2020/01/07
gachi_folk
10
人種問題は近くて遠い案件で、どこか対岸の火事であったりする。それをグッと近づけたと言えるほど経験も知識も圧倒的に足りていないのだが、現状認識させてくれる有益な書となった。2020/02/14
much
9
超超超面白い。むちゃくちゃスラスラ読めた。大枠は大恋愛小説ではあるものの、やっぱり人種とジェンダーの視点の鋭さが一番特徴的だと思う。白人の彼氏と黒人用のファッション誌について議論するとことか、日本人だけどその葛藤すごい分かる。パーティーの場で意見が合わない人に対して自分を殺せずイデオロギーをぶちまけてしまうとことか。痛いほど分かる。普段から気になるけどうまく言語化できないから放っておいたモヤモヤを丁寧に拾ってくれてるような感覚。アメリカとナイジェリアだけじゃない、普遍的なことがたくさん描かれてる。2020/07/30