内容説明
20世紀初頭から現代まで,東京はいかに〈まなざしの場〉として経験=構成されたのか? 街頭,百貨店,映画館,テレビ,テーマパークなど各所における〈まなざしの政治〉を固有の地理的文脈のなかで明らかにし,地政学的展望へと向かう.『都市のドラマトゥルギー』『博覧会の政治学』以降の20年にわたる都市論の集大成!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵐窟庵
4
『ドラマトゥルギー』の続編。各年代の論の集成。日本の映画館が当時世界一あった話や、戦前の蓄積から戦後世界屈指の広告の話など、盛り場論がメディア論を含んだ広範な都市論に進化。中でも戦時中にアメリカが日本の都市を空襲の標的にした方法から戦後の都市空間の形成過程になった仮説は新鮮。さらにメディア都市空間は日本とアジアの関係にまで拡張され、時代を経るにつれ日本の都市ではポストモダニズムが薄れる反面、東南アジアの都市では日本化が目標となりポストモダニズムが進行したという、二重逆向きのオリエンタリズムが興味深い。2020/02/18
hika
3
〈近代〉の経験と構成が〈まなざし〉の経験によって貫かれているという著者の視点とその事例としての都市、映画、広告、テレビ、ディズニーランド、空襲と写真等の記述は一貫しており、それを思想史的に位置づける序章の手さばきは非常に美しい。その一貫性と美しさは本書で近代という枠組みの中で対象とされているのが〈東京〉であるところにもよるのかもしれず、そこに本書の美点を見るか限界なのか2017/03/13
センケイ (線形)
1
百年史的に「都市」の変遷を追っており、各テーマが複雑に絡むさまに興奮。特に、私たちは今やほんものの都市に出会えていない、という議論に驚かされた。ディズニーランドを嚆矢に、メディアによるイメージ(例えば憧れのアメリカ像)が、実在の場所に先行し始め、以降、東京についても、私たちはメディアにイメージされた東京にしか出会えなくなったという。本全体に話を戻すと、都市の人口学的な面よりも、言語を通じて社会的に構築される面に着目する本書は、百貨店や映画、テレビなど、都市好きには嬉しい話題を本当に漏れなく網羅してくれる。2019/03/27
Daimon
0
都市のまなざし――。閉域としてのディズニーランド。ブーアスティンを引き、「現実によってイメージを確かめるのではなく、イメージによって現実を確かめるため」(pp. 319)だとしつつも、その現実=本物までもが失効しうる契機、もはや、イメージに支えられたものがリアルであるというハイパーリアル。スクリーン上の二次元に自らを投影する奥行きを失った空間。後半の写真論にも重なる。ソンタグ「世界をカメラが記録するとおりに受け入れるのであれば、私たちは世界について[すでに]知っているということである」(pp.459)2017/06/06