内容説明
戦後西側諸国の憲法の共通基準であったリベラル・デモクラシーが,「ネオリベラル」と「イリベラル」の挟撃を受けて世界的な危機に直面している.トランプ現象,イギリスのEU離脱をめぐる混迷,日本の改憲論議などを前に,戦後知識人たちの言説を手がかりにしつつ,私たちの座標軸をどこに求めるべきか考える.1979年以降21世紀まで,10年刻みで岩波新書を刊行してきた著者が新たに問う.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
65
「憲法学とは何を追究する学問なのか」という命題の一部が理解できた。新書という形態では、紙面が足りず議論が尽くされていないと感じる部分もあった。2020/01/15
ゆう。
24
立憲主義が脅かされている中で、立憲デモクラシーとは何で、今日持つ意味など考えることができた。2020/01/15
katoyann
20
自民党の憲法改正草案の意味や、現在の世界情勢について分析している。まず、我々が注意したいのは、イリベラルデモクラシーの台頭である。具体例は、(racists,fascists,separatists)が多数選出されたボスニアの選挙である。つまり、差別排外主義が政治を席巻することにより、寛容さが欠け、リベラルの要素が潰されていく状況がある。さて、憲法改正の標的は「個人の尊重」という普遍原理である。改正は個人の自由に権力が制約をかけるというイリベラルの先駆けだとする。自由のない社会はすぐそこである。2022/08/17
崩紫サロメ
12
複数の講義・講演を書籍化したもの。最初の講演では標題のリベラルとデモクラシーの概念の整理、それが対立しうること、どのようにその対立や両立があったのか、イギリス型、フランス型などに分類している。他の講演は戦後あるいは現在の日本に関するものである。特に面白かったのが、戦中、戦後、21世紀初頭を生きた知識人・日高六郎の歩みを辿った「戦後民主主義をどう引き継ぐか」というもの。歴史的な転換点の中で苦悩する知識人の姿には、我々もどう生きるべきか、考えさせられる。2020/03/06
Hiroo Shimoda
8
リベラルとデモクラシーは別次元であり衝突しうるもの。どちらに力点を置くか?立憲民主党はいかに答えるのだろうか。2021/04/08