内容説明
幕末維新から令和の代替わりまで
歴史と天皇をめぐる「思想の戦い」が始まる!
なぜ徳川御三家から尊皇思想が生れたのか?
「衆」と「番」の論理で幕末維新を読み解く
タテの儒学、ヨコの国学
大日本帝国憲法 伊藤博文と井上毅の“暗闘”
南北朝正閏問題・天皇機関説事件は「大衆の反逆」だった?
昭和天皇への御進講・平泉澄の挫折
柳田国男VS.折口信夫 相克する天皇像
「網野史観」が天皇像をリニューアルした?
近代天皇制の枠組みが壊れた日 ほか
迫り来る外からの危機
「国のかたち」はどうなる?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
68
博覧強記の片山節が炸裂。どうやら講義録らしい。音楽評論家とばかり思っていたら、近現代史に詳しく、思想史の研究家のようだ。本書には、さすがに目次はあるものの、索引もなければ、参考文献もない。解説もない。したがってどういう経緯で書かれた(記録された)のかも分からない。語調からして講演か講義だったのかなと推察できるだけ。あるいは、著者は記憶だけで講義したのだろうか(さすがに文中に参照文献は書いてあるが、その本に言及するのだから、書名を書くのは当然だろう)。2020/11/06
trazom
59
江戸から現代までの天皇論の推移が、とても分かりやすく整理されている。水戸学/五箇条の御誓文/大日本帝国憲法/南北朝正閏問題/天皇機関説事件と歴史を辿った後で平泉澄に到るのは、極めて順当な構成だが、そのあとに「柳田国男と折口信夫」「網野善彦」という二章が加えられているのが抜群にいい。アジール論と後醍醐天皇観に対する平泉澄と網野先生の対比、更に、「平成天皇は、国民の近くに寄り添う折口的天皇像。令和天皇は、より持続可能な柳田的天皇像」という片山先生の考察は、柳田・折口・網野各先生の本質を見事に象徴している。2020/06/16
樋口佳之
37
水戸学成立の経緯とか、平泉澄にまつわる話とかなるほどと思うのだけど、福本イズム山川イズムなんてレアな話にまで言及があるのに、非戦論反戦論の系譜、弾圧立法の強化とか3.15などの記述が無い。この枠取りをすることで、著者の描く国民像は読みやすくはあるけれども、ちょっとゆがんでいるよなあと思いました。2020/06/21
軍縮地球市民shinshin
22
皇国史観というと、平泉澄や戦前の文部省が想起されるが、本書はそういった狭い意味での皇国史観ではない。前期水戸学から稿を起こし令和の代替わりまで扱っている。著者の天皇がいる限り「皇国史観」は続くという結論には同意する。網野善彦のところが面白かったか。彼はマルクス主義から出発し若い頃にその思想は捨てたが、生涯「反天皇」であったことは確かだ。「人類の歴史で見ればたかだか1300年の歴史」と嘯いていたというが、やはり網野は死ぬまで保守思想、つまり皇室が長く続く意味は理解できなかったと感じた。2020/05/28
無重力蜜柑
19
何故この人の本はこうも面白いのか。「右」の思想をある種の共感を持って内在的に、同時に冷静に描ける稀有な素質の賜物だと思う。だが決定的なのは大きな「精神史」を描くその抜群のセンスだろう。天皇は近代日本国家の中でいかなる働きをしたのか。この大問題を、政治や経済の「実証」ではなく各時代の思想家の言説から「史観の遷移」として描き出した本作は、まさに著者の面目躍如たる作品だ。日本人が天皇を必要とする限り日本は天皇のいる国=「皇国」であり、我々は時代ごとの「皇国史観」を探究し続けるのだという結論は感動的ですらある。2025/04/03
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