内容説明
2020年3月開業の「高輪ゲートウェイ」で一躍注目を集めた駅名。日本の駅名とは、そもそもどういうものか。明治以来の歴史的変遷から浮かび上がってくる、思想、そして社会的・政治的・文化的背景とは。さらに、カタカナ・ひらがなを多用した「キラキラ駅名」はいかなる文脈から発想されるのか。駅の命名メカニズムを通して、社会構造の変化や地名との関係、さらに公共財としての意義や今後のあり方を展望する。多くの発見と知的刺激に満ちた本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
六点
15
「高輪ゲートウェイ」問題で怒ってはるのだろうなと、思ったら案の定である。「実質を伴わない虚飾に満ちた駅名」を排除するには難しと思う。何となれば人間は自分を飾る生き物であるから。実際に日本において鉄道駅名は融通無碍と言う他無い位、商売っ気に満ちた命名法をしているからである。駅名に地名が合わせたりもしてきたのだ。ぬこ田の近所の路線も近傍の私鉄駅名に「JR○○」と付けている。地元地名を尊重しているように見えるが、批判的に捉えられている。キラキラ地名も100年経てば古色を帯びるだろう。その評価を待てばよいのでは?2020/04/13
雲をみるひと
15
地図関係の著者が多い作者による駅名論。鉄道黎明期から最近まで時代を追って駅の命名の傾向がまとめられている。特に鉄道の交通における地位が高かった頃の行政区分と駅との関係に関する記述は地図、鉄道双方に詳しい作者ならではと思う。一方で愛情がある故かもしれないが、最近の駅の命名傾向に対する評論にはもう少し公平さがあってもよかったかと思う。2020/03/31
シンショ
8
駅名も地名と共通する面があることを考えさせられた。たしかに著者が指摘する若者ウケを狙ったおじさんがオシャレだろと思って命名したような的外れな駅名には違和感を覚える。ただ、歴史を遡れば江戸期でも他所の領地から国替えになった藩主によって替えられた地名も数多く存在するだろうし、さらにそれが明治期以降もその時々の土地の使われ方で地名が変わり、それに伴って駅名も変化し続けたと思う。例に上がっている「高輪ゲートウェイ駅」も、そのまま残るかもしれないし、受け入れられなくなったら変わってしまうだろう。2021/11/26
やまほら
8
「地名崩壊」(https://bookmeter.com/books/14585009 )の駅名版。高輪ゲートウェイ駅の開業に合わせての出版で、眼目は最終章「これからの駅名はどうあるべきか」なのだが、主張は十分理解でき、基本的にはわたしも大いに賛同なのだが、説得力はあまり強くない。著者も半分諦めているのだろうか。そもそも、最初に品川じゃないのに品川駅にしてるんだしね。それ以外の、様々な視点からの駅名の分析は、巻末の各種一覧表もあっておもしろい。これを元に出るのだろう、視点を加えた今後の新刊が楽しみ。2020/05/31
tkmt
6
多様に溢れる駅名の命名法について帰納的に説明を試みる本。「地名は過去と今を繋ぐ糸」という表現が素晴らしい。しかしながら、過去から繋がる歴史の地層に地名も含まれているのであれば、現代のキラキラした駅名も「新田」地名などのように、現代の世相を反映した示準化石となるだろう。重要なのは以前の駅名がどうだったのか、どう言った要因で駅名が改められたのか、そうした経緯を記録しておくことだと思った。2021/11/12




