内容説明
わたしたちは何によって“ひと”として生まれ、どういう理由で「あのひとらしい」と言われ、どのようにしてときにその権利が擁護され、ときに糾弾され、やがて“ひと”として消えていくのだろうか――。他者=「顔」との遭遇、愛憎という確執、個としての自由から、市民性・多様性、死など。“ひと”をめぐる出来事には常に、知覚、自己意識、理性、権利と契約、道徳と倫理といった哲学の主題が伴走する。本書はそうした問いの数々をゆるやかに開かれたまま差しだし、共鳴し連鎖する思考を展開していく。
目次
はじめに 〈ひと〉の現象学
1 顔 存在の先触れ
〈顔〉との遭遇
〈顔〉の特異性
だれかとしての〈顔〉
執拗さと儚さと
対面
到来
2 こころ しるしの交換
おもて
「仮面」の誘惑
心は見えない?
〈しるし〉、あるいはふるまいの形
スケーマ
〈たましい〉の放逐
皮膜
〈しるし〉の交換
〈たましい〉の流動
欲望の宛先
〈無〉を包む衣のように
3 親しみ 家族という磁場
巣の密度
〈家族〉の両義性
共存における約束
ルート・メタファー
「育てる」のではなく「勝手に育つ」場所
家族に代わるもの?
葛藤ということの大切さ
傷としての〈わたし〉
記憶と幻想
4 恋 「この人」、あるいは情調の曲折
attraction
魂の力学
「肉体の襞」
憎しみの媒質?
流動化する支配と従属の関係
肉体の襞
5 私的なもの 所有の逆説
「わたし」はわたしだけのものではない
自己所有という考え方
所有の根拠?
資格社会の前提
6 〈個〉 自由の隘路
「自由」への訝り
オートノミー?
所有関係の反転
制限のない自由はない
「自由であるべく強制されている」?
「自由」という権力?
他である自由
7 シヴィル 市民が「市民」になるとき
「市民権」という意識の(再)浮上
「原子化」する社会と市民の受動化
新しい「責任」のかたち?
新しい社会性?
残されたいくつかの問題
8 ワン・オブ・ゼム 「多様性」という名のアパルトヘイト
人格の多様性?
「国家」に直結する個
空疎な自己像
相対主義の問題
Anti Anti-Relativism
〈同化〉を超える思考?
原文なき翻訳
9 ヒューマン 「人間的」であるということ
「ヒューマン」であるということ
「だれ」にもなりえないひと
焼け跡という形象
naturalとnormal
解釈の規則
「さっぱりわからん」と「おまえはアホか」
「人間と動物の違い」?
コミュニケーションとディスコミュニケーション
側面的な普遍
10 死 自然と非自然、あるいは死の人称
死はシステマティックに覆い隠されている?
死の脱社会化
屍体と死者
死なれること
死の人称性
意味と無意味、あるいは人称の彼方
あとがき
文庫版あとがき
感想・レビュー
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水色系
たけのこ