内容説明
ノスタルジックでやるせない傑作ミステリー。
1978年12月、バルセロナの貧困地区で一人の少年が殺された。それから37年後、二人の男は偶然再会した。一人は人生の成功者として、一人は人生の落伍者として。彼らは幼い頃に親友として同じ団地で過ごし、12歳の時に罪を犯して、まわりの大人の思惑で離ればなれとなっていた。そしてその再会から、全ての歯車が狂い始めた……。
『死んだ人形たちの季節』『ある自殺』のベストセラー作家が、友情とは? 贖罪とは? 家族とは? を問う、ノスタルジックでやるせない、スペイン発傑作ミステリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
26
ひとつの殺人事件とその37年後の話だけど重くて辛くてなかなか進まなかった。自ら不幸に向かって行く人たちと、それを利用する人と、抜け駆けは許すまじと苛めを仕掛ける人と、自分の嘘で半分つぶれかかった人と、あまりいい人ほっとする人がいない。舞台はバルセロナで、旅行に行った時貧富の差はあるなあという印象は見当はずれではなかったみたいだ。コインをもらう紙コップを前にうなだれている若い人がいっぱいいた。地下鉄で皆が目を伏せる中民族の誇りみたいな歌を歌う団体もいて、嫌な感じがしてアジア人の自分は途中下車した時もある。2020/09/08
星落秋風五丈原
16
子供の頃の因果が成人後の人生にも影響を与える。2021/07/23
shizuka_電気うさぎ
14
辛いなぁ。根本にあるのは「いじめ」。不当な扱いを受けても仕方のない人間はいるのか。知的障害、破綻した親、余所者。では不当に優遇された人間は幸せになれるのか。加害者、被害者、その家族、傍観者。時に立ち向かい、時に逃げたり忘れたりと、それぞれの生き方、生かされ方。残酷なひとつの決着はあるけれど、光の射す未来も提示される。ミリアムの強さと明るさ、生々しいほどの女性としての魅力、覚悟ある母親としての姿勢、どれをとっても素敵だと思う。2020/04/18
miaou_u
11
東山彰良さんの『僕が殺した人と僕を殺した人』のような展開かな、と読み始めたが、登場人物各々がどんどん救いようのない、救いのない点と線を結び始め、最悪の方向へとズブズブと嵌っていく。どんな時代、国であっても、形は変われど無くならない、差別、虐め、嫉妬の連鎖。かつて子どもであった大人たちには嫌悪感を、青春のただ中にいる子どもたちには暴力的な残酷さを。どす黒い激しく醜い感情の渦、罪と罰に飲み込まれる。 「誰だって、できるものなら『スタンド・バイ・ミー』の世界で生きたかった。」何気ない一文が後になって突き刺さる。2020/04/24
acchanpon
5
とても重たい話。スペインの小説で1970年代に少年時代を過ごした子供たちと2016年の今を過ごす子供たちのつらい人生が交錯する。悲劇は何重にも重なって苦しくなるが、そして、結末はハッピーエンドではないが、読後感は悪くない。途中は本を置くのがもどかしいほど、彼らの人生の行く末が気になり、そして、最後の最後での思わぬ結末に唖然とした。生きることの悲しみと少年時代がどれほど人の人生を左右するかを教えてくれる、いい小説だと思う。友人にも勧めたい。2020/05/18