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内容説明
東日本大震災に伴う原発事故により、多量の放射性物質が降り注いだ福島県伊達市。当初、独自の方法で除染を進める「除染先進都市」として注目を集めた。しかし、行政や関わる有識者は、不安を抱える市民に対して、なぜか放射能汚染を過小評価し、安心・安全を植え付けるような対応に終始した…。著者の故郷で、子どもの未来のために闘う人々を9年かけて克明に追った意地のノンフィクション。
目次
文庫版のためのプロローグ
序章
第1部 分断
第2部 不信
第3部 心の除染
文庫版のためのエピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
131
原発事故で汚染された福島県の除染。主に中通りと浜通りの北部から中部で行われた。原発周辺以外は、除染も終わったと思われた。福島市と飯舘村に隣接する伊達市。伊達市では市内の七割が除染されていない。場所によっては、全村避難となった飯舘村と同様に汚染されていても自主避難しか行われなかった。それは原発推進派による、年間被ばく線量基準を引き上げる為の意図があった。六万人の市民を被ばくさせ続けビッグデータを取る。市長と市役所幹部は市民を見捨てたと言えよう。子供の甲状腺異常。市民の尿検査で判明する、人々のセシウム汚染。→2020/06/14
ちゃちゃ
114
「心の除染」とは?まずタイトルに疑問を持つ。副題の「原発推進派の実験都市」にも違和感を覚えた。それは読み進むにつれ大きな怒りへと膨れあがっていく。著者の黒川氏が9年に及ぶ克明な調査によって浮き彫りにした驚くべき事実。福島県伊達市の市民は何も知らされないまま、原発推進派の有識者や市長によって実験台にされてきたのだ。市民に一年間個人線量計を装着させ、そこで得た測定データは、国際的な被爆基準を緩和するため、つまり放射能の危険性を過小評価するために利用されたのだ。市民を愚弄する原発行政を告発する渾身のルポ。2020/03/11
rico
98
ショックだった。こんなことが起きていたなんて。丹念な聞き取りと調査で著者がたどりついた「心の除染」という耳障りのいい言葉の裏の真実。地域を分断し異を唱える者を排除。実施すべき除染をすっ飛ばし、復興を高らかに謳い上げる。住民たちの同意のないまま集めた「貴重な」ビッグデータを使い、将来にわたって原発設置側の負担を軽くしようとする企み。あの事故を「終わったことにする」強い意志。黒幕はわからない。でもこのような欺瞞なしには成り立たない原発という存在ありきの国づくりは、やはり容認できないという想いがいっそう深まる。2021/03/05
papako
60
何も知らなかった。まずタイトルの『心の除染』読む前は前向きな意味だと思ってしまっていた。恥ずかしながらこの本を読むまで聞いた記憶もなかった。以前読んだ『藻屑蟹』でも書かれていた金による住民の断絶。わざと格差をつけて対立を生む。こんなの市や県がやることじゃない。市民の不安や親としての心配をモンスター扱い!ISやオウムと同じだなんて!科学的じゃない。癌は誰でもなる。問題ない。そんな言葉で言いくるめられると思っているのか?そのためだけに2億円!そしてあまりにも何も気にしていなかった自分に愕然としました。2022/02/06
モモ
56
苦しい。原発の恩恵は全く受けていないのに、あの日の風向きで放射線が降り注いでしまった伊達市。数値が低いとされるC地では、お隣さん同士で補償が分かれる。学校は2012年夏から屋外プールで泳がせようとする。学校給食では除染が終わっていない2012年度産の伊達市産米を子どもたちに食べさせる。伊達市は国の基準を倍近く緩和する除染基準を勝手に作り、除染をなるべくしないことにした。なぜ?また除染は全然終わっていないのに除染費用64億円のうち56億円を返している。新しい市長になった伊達市。除染をして市民を救ってほしい。2021/04/01