中公新書<br> 歴史探究のヨーロッパ 修道制を駆逐する啓蒙主義

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中公新書
歴史探究のヨーロッパ 修道制を駆逐する啓蒙主義

  • 著者名:佐藤彰一【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 中央公論新社(2020/03発売)
  • ポイント 9pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784121025678

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内容説明

宗教改革以降、カトリックは修道院での学術活動を活発化させた。人文主義者たちは古典を博捜し、教会史や聖人伝などの文書を批判的に検証する学問が進歩を遂げた。偽書を識別する文献学や文書学、ローマ法の解釈学など、現代の歴史学の基礎がここに形成されたのである。その中核となったのが、サン・モール修道会のマビヨンらであった。啓蒙思想の席巻、宗教と世俗の相剋の間で、歴史と真理を探究した人々の足跡を追う。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

64
最初は西洋史の本かなと思って手に取り読んでいたが、途中から自分の勉強している分野(図書館史)に深く関係しているとわかりモチベーションが上がった。なぜヨーロッパでは歴史的に修道院が本を収集管理していたのかなと疑問に思っていたのだが、その謎が解けた。興味の領域が広がり、読んでよかった。2019/12/20

うえ

16
欧州各地に続々と建てられた修道院。そこから厳格な古典的考証学が誕生していく。しかし皮肉にもその考証学を挫折させたのはヴォルテールら啓蒙主義者達であった。例えばフォントネルは歴史を科学から追放し、フランス「文化の内奥に、回復不能の亀裂を入れた」 (バレクリージェル)という。ヴォルテールは傑作『ルイ十四世の世紀』を生み出すが、それは偉人ではなく平民を対象に据えるが細々とした「考証学的考察」は行わない作品でもあったのだ。ヴォルテールらの攻撃は政治的に成功するが、本当に必要なのはギボンの様な啓蒙と考証学双方だった2020/01/16

MUNEKAZ

12
主教改革以後の修道院における学術活動を扱った一冊。中世以来、修道院が一つの文書センターとして機能していたのは知っていたが、それを厳密に考証し、現代の歴史学にも通ずる道を開いた人々がいたのは興味深かった。キリスト教の歴史を正確にたどることも、神への奉仕だったのである。後半はフランスにおける彼ら修道院の「考証学派」と啓蒙主義者との争いがメインとなる。文献史学者たる著者は「考証学派」への思い入れを隠さないが、同時に反対派の論説も、歴史学に対する今日的な批判と被るものがあり、現代に通ずる視点にも感じた。2024/01/18

馬咲

3
ヨーロッパの修道会は史料編纂のための学術機関でもあった。本書はデカルト主義に抗しつつ学問的方法論としての史料批判(考証学)を開拓したマビヨンを中心に、修道会が歴史学で果たした役割を概説。後に啓蒙思想により修道制が後景に退いた際の学問的得失にも注目。啓蒙史学は民衆の歴史・社会史を好んで書いたが、そこには「国民」を創出するナラティブを必要とした当時の状況も伺える。また大きな対価だが、考証学のような精密なテクスト批判をしない代わりに歴史的関心の射程を「文明」にまで広げて、文化人類学の先駆となるような視座を得た。2023/11/11

Cinejazz

3
西洋における歴史探求の経緯を論じた学術研究書です。修道院の修道僧が歴史史料の編纂を始める以前の経緯から啓蒙思想による真理と歴史を探求した人々を叙した本著者は、一般的読者(新書の読者)を対象にした記述を心掛けたとありますが、初めて目にする人名が大半かつ専門的論調であるため、中世の修道制に全く馴染みのないものにとっては、硬派で難解すぎた一冊でありました。本書は、ヨ-ロッパの修道院と修道制の歴史シリ-ズの五冊目に当たり、“ドナルド・キ-ン先生の思い出に捧げる”と銘打ってあります。(N図書館蔵書)2019/12/17

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