内容説明
かつて落語を凌ぐ人気を誇った講談は、戦後存続を危ぶまれるほど演者が減った。しかしここに、新たな光が射している。風雲児の名は、神田松之丞。確かな話術と創意工夫で高座に新風を吹き込み、二ツ目ながら連日満席の講談会や寄席に新客を呼び続けている。真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名する彼は、なぜ講談に生きる覚悟を固め、何処を目指してゆくのか。自ら語った革命的芸道論。(解説・長井好弘)
感想・レビュー
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TakaUP48
42
神田伯山こと元・松之丞の幼少期からの思いや生き方を、インタビュアー杉江氏の手によって、師匠・神田松鯉や親友、本人の言葉を通して描いてある。幼少時に亡くなった父の存在は、形はどうあれ影響したようだ。勉強しなかった学生時代、小生意気で出来の悪い新弟子時代、Fランク(入試最低ランク)の前座をやっていたが、師匠・松鯉の指導法や理解に助けられたことは大きかったと思う。連続物が講談の命だという師匠と「畦倉重四郎」19話を親子会でやって、師弟の絆も深まったようだ。これを機に、落語とは違う日本の話芸に触れてみようと思う。2020/03/23
kawa
30
旅行中に立ち寄った北海道砂川・いわた書店で目にとまった一冊。奥さんが神田伯山(松之丞)さんのファンなのでお土産代わりに購入。それから間が空いて、伯山さん講談チケットがゲットできたので予習代わりに一読。ちょっと不器用でコマッタ君が講談界の明日のエースとしてブレークするまで、講談・演芸愛の独白を聞き書き。講談は歴史小説好きと相性良いのではないかな、講演も楽しみな読んで良かった一冊。ちなみにいわた書店内の展示の本の多くは、有名な「一万円選書」のリストに入っている由、本書もその一冊のようだ。2022/09/02
Yuuki.
19
小さい頃から落語は聴いているが、講談は敷居が高そうとか退屈そうというイメージがあって、食わず嫌いだった。そのため、講談そのものについてもあまり知識が無かったため、これを読んで色々な事を知れた。一番驚いたのは名前の管理云々の話。また、神田伯山自身も、もともとは落語から演芸に興味を持ったこと、講談にも新作があることを知り、少し敷居が下がった。そこで、この本に書かれているように、寄席のネタをいくつか聴いてみた。残念ながら、実際に聴いても講談は性に合わなかったが、この本はとても面白かった。2021/10/24
fseigojp
16
談春とか、この人とか、直球勝負が好きだな 談志は、まだまだ良さがわからない 業の肯定は、まったく同感なのだが2021/05/10
nishiyan
15
2017年に刊行され、文庫化にあたり新たに第七章を加筆した神田松之丞さんの生い立ちから芸論に迫ったノンフィクション。今の神田松之丞を形作ったものを大いに語られ、そこを補強するように師匠の神田松鯉先生を始めとする関係者インタビューが散りばめられている。第七章はラジオでも語られた伯山襲名に至る経緯とラジオの裏側について。ラジオから神田松之丞さんの芸に触れたものとしては興味深い内容だった。しかしあの笑い屋氏はこんなにも買われていてかつ、いい加減とは(笑)。またこのような本が出る頃には大名人となっているのだろう。2019/11/03