ちくま新書<br> 障害者差別を問いなおす

個数:1
紙書籍版価格
¥924
  • 電子書籍
  • Reader

ちくま新書
障害者差別を問いなおす

  • 著者名:荒井裕樹【著】
  • 価格 ¥825(本体¥750)
  • 筑摩書房(2020/04発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073013

ファイル: /

内容説明

「差別はいけないこと」だというのは当たり前の感覚である。しかし、なにが差別かを考えだすと、その答えは曖昧なものになりがちだ。多様性が叫ばれる一方で、実際にはマイノリティへの不寛容な価値観が噴出するなか、あらためて障害者差別に向き合う必要がある。過去と現在をつなぎ、何が差別とされてきたのか、そして対していかに異議を唱えたか。その過程は人間の尊厳に迫ることになるだろう。

目次

序章 「障害者差別」について考える意味
「差別」を捉えるには?
障害者差別解消法
障害者は「不幸」なのか?
誰かが殺されても気にならない社会
相模原事件後の世界を生きるために
第一章 「差別」と闘いはじめた人々
声を上げはじめた人々
コロニーの建設
青い芝の会の誕生
青い芝の会が闘ったもの
第二章 障害者のままで生きる
青い芝の会はどこから来たのか
行動綱領「われらかく行動する」
青い芝の会の特異点
「常識」と闘う
第三章 「健全者」とは誰か
「障害者でない者」を何と呼ぶか
「健全者」の語感
「マジョリティ」を捉え返す
第四章 奪われた「自分」を取り戻す
本人の言葉、本人の意思
「健全者」が踏み込んでくる
在宅障害者たちの声
「憤懣」が自身を責め苛む
「理解」と「支配」は紙一重
第五章 障害者は殺されても仕方がないのか
「加害者への同情」は許されるのか
親の「殺意」を見据える
「見たくないもの」を暴き出す
第六章 障害者にとって「普通の生活」とは何か
川崎駅前バスロータリーでの闘い
青い芝の会の訪問運動
青い芝の会とバス会社の交渉
「介護者」とは誰のことか
バスに乗るのは「恩恵」なのか
第七章 障害者は生まれるべきではないのか
優生保護法とは何か
優生保護法を問い直す
手術の痛みを言葉にする
優生保護法改定案の問題点
青い芝の会の反論点
「親的な価値観」への反発
障害者の「性」と向き合う
結婚という「人間復権」
「人間」の定義を組み替える
終章 障害者差別と向き合う言葉
変わらない言葉
社会の問題を語る言葉
「人間」の線引きに抗う
「人間」の意味を積み上げる
参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

TATA

45
新書と思って油断して読んでるといい意味で裏切られた。相模原の例の事件を踏まえながら障害者から見た社会論を展開する。社会が強靭さを具備すれば当然その中でより多くの人が社会的な平等のもと扱われるはず、社会福祉や公益性はそうやって養われるもの。そう考えるとまだまだ現代社会に足りないところはたくさんあるわけで、まさにその闘争の歴史を扱った強烈な一冊。ダイバシティーと言葉で言うのは簡単なのでしょうが、より強靭な社会の一員となるための道のりはまだ遠いのですね。2022/03/06

イトノコ

27
戦後の障害者の活動を「青い芝の会」を中心に分析する。/本質ではないかもしれないが…どこかで聞いたような話が多い事に気づく。貧困層は子供を作るな、LGBTは生産性がない、妊婦やベビーカー連れは公共交通機関を使うな、引きこもりは親に殺されても仕方ない…いずれもごく最近の言説だ。戦後日本は差別の範囲を、障害者の外へ逆に拡大させてきたのか。それは生産的、効率的のお題目のためもあろうが、それ以上に自らを「健全者」としてそれ以外の人々を見下したい欲求による気がしてならない。その極地が相模原の事件なのかもしれない。2020/06/30

ネムル

23
障害者差別と闘ってきた青い芝の会の活動と、その中心人物による著書『障害者殺しの思想』『母よ!殺すな』を中心に、差別感情を問う。「愛と正義」をエゴイズムと否定する会のテーゼは過激で露悪的ながらも、健全者の障害者感を脱構築する試みに思える。差別者による無意識な行為を転覆させていく言説、著者は日本文学も専門にしているらしいが、一貫して活動における言葉の使用を大切にしている。すごく好印象だ。相模原事件でしきりに唱えられた「障害者も同じ人間」、これはマジョリティが使うと抽象的で曖昧な「人間」像に同調圧力をかける2020/06/09

coolflat

18
青い芝の会の運動をもとに、障害者差別と日本社会のあり方について問うている。117頁。青い芝の海は、障害者の親がしばしば吐露する。この子よりも先に死ねない」「この子は自分が守らなければならない」という切実な思いこそ、障がい者を抑圧する心理が潜んでいると指摘しました。多くの親には、障害者と親が別々に生きていくといった発想がなく、障害者のすべてを抱え込もうとしてしまう。そうした親の態度が障害者の自立を阻む壁となり、その「抱え込み」が限界を超えて破綻した時、親子心中や子殺しが発生すると、彼らは批判したのです。2022/10/04

zel

18
知らなかったな。自分の勝手な決めつけや独りよがりがあったかもなと。何か明確な回答があるというわけではないけれど、いろいろと考えさせられた。青い芝の会を中心に、障害者差別解消に向けた取り組みをおう。マジョリティは往々にして社会が…国が…大きな主語をだしがち。出せるのがマジョリティ。マイノリティはそんな言い方ができない。学び続けること。相手の生き方を侵害しないこと。見つめていきたい。かつ、自分の生き方も見つめる必要があると感じた。【LL】2020/05/18

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/15501439
  • ご注意事項