ちくま新書<br> 令和日本の敗戦 ──虚構の経済と蹂躙の政治を暴く

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ちくま新書
令和日本の敗戦 ──虚構の経済と蹂躙の政治を暴く

  • 著者名:田崎基【著】
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 筑摩書房(2020/04発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480073068

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内容説明

崩壊寸前のこの国は、やがて「令和の敗戦」を迎える……異次元政策のせいで循環せずに停滞し続ける景気、成長なき経済状況のもと疲弊しきった「働く人」と拡大する格差、隠蔽と欺瞞が常態化し民主主義を蹂躙する政権の振る舞い。2013年以来「この道しかない」と各政策を掲げ続ける安倍晋三首相が、戦後最長の期間政権の座に留まったことの末路だ。戦わずして「敗戦する国」日本の正体を、経済・社会・政治の各現場を取材した気鋭の記者が炙り出す。

目次

はじめに第一章 転落と疲弊の現場1 超長時間労働がもたらすもの
残業五〇〇時間
「働く」ことの意味
低迷の引き金
三つ掛け持ち
「悪ふざけ動画」は私たちに何を問うのか
「おかしい」ことを「おかしい」と思えなくなる
不安定な労働者の「砦」
2 働き方改革という名の「生産性」至上主義
「隠れ残業」と偽りの「生産性」
いいものを生めない社会
残業時間だけ減らせばいいのか?
人手不足が追い打ちをかける
「残業減」圧力は「賃下げ」である
3 人口減少時代の企業生存条件
人手不足と働き方改革の必然
新卒採用二〇二一年問題
魅力ある労働環境がなければ生き残れない
4 奈落へと突き進んだ平成経済
「この国では食えない」──製造業の凋落
工場はショッピングモールに変貌
製造業は〝焼き畑農業〟
奈落へと向かう経済
転落と低迷の三〇年
偽りの景気対策、膨らむ財政赤字
一九九七年を境に、世界の潮流に乗れなくなった
耕し、種を蒔くとき
第二章 虚構のアベノミクス1 牽引するはずの不動産・建設業界が苦しい
不動産が売れない
六〇〇〇万円台マンション、即日完売
マンション販売戸数が物語るもの
噂の物件
建設業界への連鎖
建設業界にも三重苦
スルガ銀行問題とアベノミクスは表裏一体
「金が借りやすくなっただけ」の経済に底力はない
2 金融機関が麻痺している
中小企業の息の根
増え始めた倒産件数
「リスケ後倒産」と地銀の構図
生かすも殺すも金融庁
人手不足倒産
人材難の実態
守りに入った地銀
低金利政策が地銀を蝕む
加速する輸出入額の減少
日中貿易戦争に み込まれる
トドメとしての消費増税
3 異次元政策の果実は不ま味ずすぎる
景気は循環せず、停滞した
金を預けて、金を取られる。それが「異次元緩和」
毒ニンジンを食らう
「成長はない」ことを前提とした議論
それでも強気な日銀総裁
異次元の常態化と、見えない出口
シナリオの逆をいく「官製景気」
4 粉飾体質──意図的な「偽装」暴かれる
意図的かつ短絡的操作
「異次元」の内実
空論が描く砂上の景気
異常事態の常態化
迷走の政策は奈落へ
「数字よりも感性」と喝破する財務相
虚構の塗り重ね
経済を権力の源泉に
国家による再びの誤導
第三章 左右を騙す「改憲」案1 「変わらない」という 
邪知透ける改憲案
「九条」と「自衛隊」の論理を知り尽くしているはずの自民党が……
うごめく右派
過半数の賛成を狙った浅薄な戦略
「お父さん、憲法違反なの?」
2 揺るがぬ「極右」内閣
「日本会議内閣」
極右政権からの発信
「壊憲」に等しい
総理の手駒
3 「変える」という 
改憲発議「三分の二」の攻防
熟さない具体論
「議論をしない」のは、どちらか?
「一〇〇〇万人賛同署名」の行方
国民投票を見据えた周到な戦略
権力基盤の維持
4 「平和の国体」どこへ
天皇が求めた「国民の理解」
反省と低頭の旅
「平和」の裏側に
集団的自衛権という一線を突破
軍事国家への道
5  がれた保守の仮面
皇室への屈折した敬愛
不誠実な保守運動
姑息な改憲案
「改憲」という砦さえ落とせれば
論理の逆進
違憲状態を自称した初の首相
平和の本質を問う
第四章 国家の末期1 政権の膿うみを曝さらけ出した「桜を見る会」
隠蔽してやり過ごす
不条理を「閣議決定」する裏ワザ
黙殺してやり過ごす
2 圧政の現場、辺野古から
権力者による暴力の形
「大変なことになるよ」
異国ではなくこの国で起きていること
「言うことを聞け」「諦めろ」の矛先
記者でなければ?
 き出しの国家権力
沖縄の不条理
「属国」扱い
本土の人こそ、「現場を見て」
蹂躙の歴史
「沖縄だけ、戦争が終わっていない」
本土からの「蔑視」
終章 令和日本の「焦土」1 戦わずして負ける国
「一人負け国家」
戦争のコスト
経済的相互依存の世界
2 焦土と化す列島
「超高齢化社会」=「大量孤独死」時代
日本全国「うばすて山」
崩壊する「公」
3 なぜ、ここまで堕ちたのか
なぜアベノミクスは成功しなかったのか
「原発維持」という経済的武装解除
分配を求める
付録 識者インタビュー1 白井聡さん──「国体」から見えるもの
着想の原点
フルモデルチェンジ
権威と権力の分離
国民統合の喪失
仰ぎみる「米国」
戦前史、戦後史の三段階
家族国家観が内包する矛盾
権利に冷たい社会
覇権の移動と、価値なき国民の末路
2 井手英策さん──「分断」なくす再分配を
自殺率が下がった理由
経済成長はもうない
痛みと喜び、分かち合う
格差を縮め希望の灯を
誰もが堂々と生きる
3 木村草太さん──「自衛隊」明記提案の乱暴さ
集団的自衛権という難問
対話能力の欠如
国民に選択肢を
想像以上に危険
おわりに──この国は「敗戦」へと向かっている参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

こも 旧柏バカ一代

24
3年前の本。ヨーロッパで起きた国家総動員の戦争の次の形態。経済戦争。一時はその経済戦争でトップに躍り出た日本。アレから30年(綾小路きみまろ調)。トップから転げ落ち内需では、やり方を変えながら利権を堅守。その間にも世界水準では競り負け続け、それを国内では誤魔化しに誤魔化して来た事が、、30年も経ったら流石に表面化して来た。それが実質賃金の低下。政治の腐敗。本書では特に「桜を見る会」をピックアップしていた。アレは純粋に公的行事の私物化という不当、選挙区の有権者接待の違法事案だと列挙。さらに沖縄の辺野古も書く2023/10/14

つきかげ🌙

17
令和日本は既に敗戦状態にある。 何らかのイノベーションがなければ、日本のGDPは落ち続けるし、都合のいいイノベーションは期待できない。明後日自民党の総裁が選ばれるが、このような現状を変えてくれるような人物であればいいが。2024/09/25

coolflat

16
85頁。異次元金融緩和は急速な円安を生み、しかし意図した輸出拡大はなく、逆に円安にもかかわらず輸入が増大した。その結果円安のインフレとなり、実質賃金と家計の実質所得を削り取った。消費は停滞し、アベノミクスが意図する「円安による景気回復のルート」は途絶えた。ただ円安は特に輸出系企業に大きな利益をもたらした。大企業の多くはアベノミクスで得た利益を賃上げや設備投資に回さず、内部留保として蓄えた。アベノミクスが引き起こしたこの経済現象は、景気後退とインフレが同時進行し人々の生活が苦しくなる「スタグフレーション」だ2022/12/04

みなみ

16
神奈川新聞の田崎記者の著作。アベノミクスの仕組み、行き止まりの異次元緩和。改憲と声高に叫ぶ安倍総理と、現実には与党内でも進まない改憲議論。さまざまな日本の問題をあぶり出す一冊だった。ことあるごとに改憲と口に出す安倍総理がなぜ改憲議論を始めないのか、ここ数年不思議だった。その理由が考察されていて大変参考になった。2020/10/30

どら猫さとっち

7
安倍政権が発足してから8年目、今や風前の灯火または黄昏を迎えようとしている。これまで安倍政権下で起きていること…労働、経済、憲法そして社会を焦点を当てて、腐敗する安倍政権の正体を炙り出した警鐘の書。本書を読めば、いかに安倍政権が冷酷で恐ろしいかわかるはずだ。著者は神奈川新聞の記者で、さまざまな社会問題を取材し続けている。その問題に取り組む視線は、鋭く冷静で人間味もある。安倍政権への批判は、人間らしい社会に繋がっている。そのことを証明している。今からでも遅くない、本書を読んで今の現実に向き合って、考えよう。2020/04/11

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