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内容説明
政府が推進する政策である「産学連携」または「産学共同研究」。一見、順調に見えるが、残念ながら様々な課題がある。企業側はともかく、大学側や研究者にとって、その労力に見合う効果が生まれたとは言い難い。本書は、研究者と弁護士の二足の草鞋を履く著者が、実際に解決に奔走した事件をベースにその実態を暴く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
185
弁護士で大学教授の著者が、実際の経験から、大学での職務発明、産学共同研究の契約、大学発ベンチャーについて検証し、現状の大学研究者を論考する。小泉政権以来の新自由主義政策が元凶だと解説。市場原理主義的な発想のもと行われた大学改革。しかし、整備すべき産学協同における大学の制度や組織体制は遅れ、牧歌的だった大学研究が民間産業に飲み込まれていると指摘する。大学は、真理を探究する多様な基礎と実用を志向する多様な応用の研究を行う。多様だからこそ新しさが創出する。その多様性が功利により失われることは憂うべきだろう。2020/04/04
rico
83
産学共同研究や大学発ベンチャーの意義は否定しないけど、それは健全で対等なパートナーシップが前提。だが、本書で紹介されるじれで見る限り現状は程遠い。企業側・大学側いずれも問題があるだろうが、例えば契約やマネジメントに明るい人材を配置して研究者は研究に専念する体制をつくるなど、必要な資源の準備できない状況が問題の根底にあるのでは。「選択と集中」をが進み、研究者は資金獲得に追われ、成果が上げられない。一方では、異論を封じ闊達な議論を排除する。この国の「知」への軽視は、絶望的なレベルまで来ているのかもしれない。2020/10/07
おせきはん
30
産学連携の重要性が言われている一方で、研究費と働く場所を必要とする研究者が、資金の出し手である企業と難しい関係になった事例が生々しく紹介されています。完全な定型化は難しいものの、企業と研究者との間でフェアな関係を築ける共同研究の契約の雛型があれば、契約内容のチェックに活用でき、多少は状況が改善するのではないでしょうか。一方で、若手研究者に負担を強いる原因となっている大学の研究室における師弟関係も、今のままではよくないと思いました。2020/08/29
zoe
26
研究によらず、やりたいことが何でも上手く競争相手にも勝ってばかりの人はそうは多くはないと思いますが、せめて、ただ強欲な人に邪魔されるような環境からは逃れたいですよね。自分のダメなところは、対抗するエネルギーを無駄に使うくらいなら、まず避けてしまえということがすっかり身に染みついて、争うことなく道を譲ることを、君子危うきにとうそぶいているところです。そんなところにエネルギーを使うなら、本文に示されているように、実験ノートまわりのインフラを整え啓蒙することが自分に出来ることかもです。2020/09/24
Iwata Kentaro
11
これも深刻な話。産学共同研究も大変だけど、とにかく若手研究者は日本で生き延びていけない。若手が未来に絶望する社会で、明るい未来はあるのか。2020/06/15