内容説明
現在のローマの中核は1527年のローマ掠奪(サッコ・ディ・ローマ)による大破壊の後に行われたバロックの都市建設によって形成された。ルネサンス教皇の実態からその過程をつぶさに描く力作。
感想・レビュー
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trazom
65
大シスマの後でローマに帰った教皇が、如何にして「教皇の都市」を作り上げたかが見事に描かれる。ユリウス二世らがパトロンとなったルネサンス美術の栄光、それを一夜にして破壊したサッコ・ディ・ローマの惨劇、都市の再生とともにパウルス五世やウルバヌス八世が支援し開花したバロック美術という流れが手に取るようにわかる。バロックを、ルネサンスに対立する概念ではなく、一連の運動と捉える著者の主張はユニークである。ローマの豊かな文化が、「聖職者にして君主」である教皇の聖俗両義性によって成し得たものとする仮説にも説得力がある。2020/08/04
kaoru
31
15世紀初頭にローマに帰還した教皇がその地を「教皇の都市」にし、いかにしてバロック美術が花開いたかを主に綴る著書。「永遠の都市」と言うより「再生の都市」と呼べるローマの教皇達マルティヌス5世からアレクサンデル8世までの歴史が多くの図版とともに示される。ウルバヌス8世の治世からバロックが隆盛となるが、ウェストファリア条約以降、教皇権が衰退すると同時にローマの芸術都市としての地位も陰ってゆく。ベルニーニやコルトーナといったバロックを代表する芸術家の仕事が多く掲載されているのが嬉しく、とても楽しく読める一冊だ。2020/09/18
MUNEKAZ
19
近世の都市ローマと教皇の関りを、美術史の観点から紹介した一冊。駆け足な内容だが、「ローマ劫掠(サッコ・ディ・ローマ)」に重点を置いているのが本書のポイント。ルター派のドイツ人傭兵たちの狼藉は、ある種の「イコノクラスム」となり、中世や盛期ルネサンスの栄華を灰にしてしまう。遺跡だらけに思えるローマも、中世の部分がぽっかり欠落しているという記述が印象的。しかしその灰の中から教皇のパトロンの下、新たにバロック美術が台頭し、ローマを再びヨーロッパ美術の中心へと押し上げる。教皇とローマは一蓮托生。何度でも蘇るのだ。2022/09/23
中島直人
7
(図書館)歴史と美術。中野京子さんのを、かなり専門的に深掘りしたイメージ。ほとんど意識したことのなかった教皇が、美術の面では大きな貢献をしていたこと、また、ローマ劫掠がかえってバロックを準備した面もあること、その2つが印象に残った。面白かった。2022/10/25
ふじこ
2
サッコ・ディ・ローマというのは知りませんでした。ローマは不死鳥のようです。2022/03/04