内容説明
律令国家を築いた男の光栄と影! 不比等は娘を天皇家に入内(じゅだい)させ、権力の頂点を狙う――藤原不比等(ふひと)は持統(じとう)女帝の寵愛を受け、律令政治家として台頭する。娘・宮子を文武天皇に嫁がせ皇太子を得、もう一人の娘・光明子(こうみょうし)を皇太子妃とした。天皇家と婚姻により、藤原氏の権威と勢力を拡大させていく不比等の野望。権力の頂点に立った男の真実に迫り、華麗なる生涯の光と影を活写する長編古代史ロマン! <上下巻>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃいろ子
32
頭の良い人間が表面上は謙虚に穏やかに、しかし着々と自分の思う通りに事を進めて行く様に惚れ惚れしてしまった。 女帝や、皇后に反感を抱かれないように、自分の足元を固めつつ。 そんな不比等の前に、理想の協力者三千代が現れ。 またこの三千代の聡明さがね。 今まで読んできた作品の中だと不比等と三千代は憎まれ役的な所があったのだが今作の2人はかっこいい。 周囲への気の使い方が半端ないのが凄い。 始まりは鎌足だけど、 藤原が天皇家の身内として力を振るう基礎を作ったのはやはり不比等なんだなぁとワクワクしながら読んだ。2024/10/27
keith
25
藤原の血を天皇家と結ぼうと画策する不比等。欲望には際限がないのでしょうか。すごい男です。NHKの英雄たちの選択やプロファイラーで取り上げてくれやんかな。2019/06/08
take5
19
下巻では、持統、阿閉皇女(元明)、県犬養三千代、文武との関係が描かれ、権力の頂点に向かって一歩一歩確実に昇りつめていきます。特に、葛野王、忍壁皇子を味方に引き入れるエピソードは、よく出来ていて面白かったです(持統が忍壁皇子を嫌っていた理由が徐々に明かされるのですが非常に説得力あり)。不比等というと藤原氏繁栄の基礎を築いた権謀術数にたけた策謀家という悪いイメージで(梅原猛の一連の著作以降からか?『天上の虹』でもそう描かれてますね)、この小説でも基本はそうなのですが、かなり好意的に描かれているように思います2020/06/28
RASCAL
15
再読。政敵の寵臣の子として天武朝では不遇だった史が、持統天皇の下、その実力を発揮していく。官僚として律令政治の中核となるとともに、持統天皇の女人、肉親の情につけこみ、軽皇子の立太子に暗躍し、自分の娘を入内させて孫を皇太子とする。持統、文武、元明の3代にわたり天皇の寵を得て、位を極め、後の藤原氏の繁栄の基礎を築くが、この後の藤原氏と皇親勢力との波乱も匂わせる。黒岩さんはこの後の時代の話を書いていないので、次に読むのは永井路子さんの「美貌の女帝」かな。2015/01/25
しんすけ
14
興味深い時代を扱った歴史小説である。個々の事象を取り上げれば『日本紀』の記述と矛盾している訳ではないのだが背景とか人間心理までに思いを馳せるとすべてが黒岩重吾の創作のように思えてくる。とくに光明子を産んだ三千代と不比等の関係が書かれているような熱い男女関係であったか疑わしい。 長年に渡って不比等を攻略家と捉えていた身には、黒岩重吾の脳裏から生まれた物語と云う気分が払拭できない。 しかしそれらがあるから、律令制度生成期のともすれば退屈になりそうな物語が、興味深く読めている事実も認めなばならない。2020/04/09
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