最後の社主 朝日新聞が秘封した「御影の令嬢」へのレクイエム

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最後の社主 朝日新聞が秘封した「御影の令嬢」へのレクイエム

  • 著者名:樋田毅【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 講談社(2020/03発売)
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  • ISBN:9784065196328

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内容説明

日本のクオリティ・ペーパーを自任する朝日新聞社。その朝日株の6割を握っていたのが、創業者・村山龍平と村山家である。
そのため、朝日新聞は村山家を「社主」として手厚く処遇しつづけた。
その「最後の社主」となった村山美知子は、1920年、新聞王と呼ばれた村山龍平の孫として生まれた。母・於藤は龍平の孫、父・長挙は子爵・岡部家から婿入りした旧華族だった。
朝日新聞が生み出す巨大な利益と、華麗なる血脈――美知子は、妹・富美子とともに、神戸・御影の邸宅と有馬温泉の別邸を行き来しながら育った。日本舞踊、古式泳法、スキー、茶道、ピアノなどを学ぶ、日本有数の「深窓の令嬢」――それが村山美知子だった。
戦後、海軍大将の長男を婿に迎えるが、朝日新聞の経営に興味を示さず、離縁してしまう。傷心の美知子は、音楽の世界で活躍することになった。
朝日新聞が後援する日本を代表する音楽祭「大阪国際フェスティバル」の専務理事として、世界各国から有名指揮者、オーケストラ、将来有望な若手を招聘した。小沢征爾、カラヤン、ルービンシュタイン、ワイセンベルクらが美知子に深い信頼を寄せた。
一方、朝日新聞の経営陣は、株を握る村山美知子の機嫌を取ろうと奔走する。専任の「秘書役」をつけ、お気に入りの高級パンを届け、記者出身の役員は慣れない茶道に挑戦し足がしびれて昏倒した。
誕生会や村山家の祭礼には編集幹部がこぞって参加し、お祝いの言葉を述べた。
しかし、子どものいない美知子社主が高齢になるにつれ、朝日株の行方が焦点になる。朝日経営陣は、あの手この手を使い、美知子社主から株を奪おうと画策した――。
その最晩年に「秘書役」となった元事件記者が、朝日新聞最大のタブーを赤裸々に明かす。
朝日経営陣は、どうやって村山家から株を奪ったのか。
巨額の税金をどのように処理したのか。
朝日新聞株が外部に流出する可能性もあった、最大の危機とは。
新聞、メディア経営の深奥に迫る、驚愕の書。

目次

【第一章 深窓の令嬢】
出会いの日
「とんでもない世界に入ってしまった」
「御霊様」との会話
思わぬ大失態
「分からず屋のおばあさん」のお世話係
【第二章 「新聞王」の初孫】
日本一のお屋敷町
思い出の有馬の別荘
アメリカ帰りの同級生
プールでお点前
負けず嫌いの妹
【第三章 凱旋行進曲】
遂げたり神風
「不自由学園」
海軍士官との結婚
【第四章 夢の舞台を】
プロデューサー・ミチ
欧州視察報告書
誇り高きマエストロたち
ついに実現した「奇跡の公演」
「帝王」カラヤン降臨
「この人は必ず伸びる」
火の中に飛び込むような決断
美貌なれ昭和
【第五章 果断の人・村山龍平】
官憲の圧力
朝日新聞 最大の危機
「個人経営」の新聞社
新元号「大正」をスクープ
【第六章 村山騒動】
醜を天下にさらす
株の買い取り合戦
積もり積もった思い
【第七章 哀しみを越えて】
異様な社葬
絶縁と和解
母のための献身
「御影の意向」
【第八章 創業家の矜持】
こういう時はデーニッシュなのよ
大赤字の公演
お気に入りの社長
黒御影石の記念碑
【第九章 社主の役割】
朝日が外資に乗っ取られる!
トラブルメーカー
「恭平にも困ったものね」
朝日株の行き先
決断の日
「経営安定のため」
六〇〇億の課税をどうするか
【第一〇章 養子探し】
二度目の秘書役
キンシップ・ユニバース
旧華族の血縁者
「もの言う株主」の退場
話が違う
あと三年早かったら
『ペンタゴン・ペーパーズ』の女性社主
たった一人のためのコンサート
【第一一章 闘病の日々】
「限界が近づいています」
病床の楽しみ
「仏」と「阿修羅」と
「一〇四歳の名医」の診断
感激の再会
残された時間
【第一二章 奇跡の人】
後見人選び
「社主のお墓も造ろうと思っています」
「側近」を自称する三人
「これで主治医と言えるのか」
理由なき全員解雇
泣いてばかりの毎日
最期の日々

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

49
今年3月、99歳で亡くなった朝日新聞社主の評伝。村山家と朝日新聞をめぐる骨肉の争いの歴史が赤裸々に語られる。真実は語る人の数だけあるだろうし、社主の評価も毀誉褒貶相半ばするには違いないが、著者の姿勢はフェアーで、社主への眼差しも温かい。私には、新聞を巡る確執以上に、村山美知子さんの大阪国際フェスティバルへの情熱の物語が心に残る。関西の音楽ファンは、彼女への感謝を絶対に忘れない。純粋で一途な美知子さんには、芸術の世界が似合う。そんな人を、経済界の駆け引きで弄ぼうとした朝日新聞の経営者たちの醜さが、悲しい。2020/05/16

チェアー

12
朝日新聞の社主という制度がずっとよく分からなかったが、朝日の歴史を読むことでよく分かった。 これほどの深窓の令嬢(もう死語だ)がいたということに驚きを感じる。ある意味、社主がいたことで、朝日は特別な新聞になれたのかもしれない。社主を排除していく過程は、朝日が普通の新聞になっていくプロセスだったのだ。 個人的に衝撃を受けた部分もあった。うん。2020/09/16

tenorsox

6
朝日新聞創業者の孫で、最後の社主(経営からは離れているが一定の株式と発言権を有する創業者一族の代表?)となった女性の一生。 株式の買取を画策する経営陣との攻防は勿論だが、戦前のセレブの暮らしぶり(幼少期〜学生時代)、音楽祭プロデューサーとしての力量(戦後の復興期)、時折り見せる茶目っ気(著者が直接対峙した晩年)等の柔らかい話も楽しい。 著者は数年間使用人として仕えた元朝日記者。お目付役として派遣されたにも関わらず社主に親身に対応し会社とも対立したようで、全体の書き振りも多少社主側に寄っているかも。2020/11/26

K.C.

6
朝日新聞の最後のオーナーとなった社主に寄り添った社員の「レクイエム」。前半の令嬢としての煌びやかな面、後半の朝日新聞の支配権を巡る朝日新聞側との暗闘。筆者も危惧するような醜い朝日新聞の側面が露呈し、保守派が嬉々として叩きそう。それくらい情けないし、凛として立ち向かった社主の姿は印象的。さて、折しも首相交代のタイミング、どこへ行く朝日新聞。2020/09/06

Melody_Nelson

5
非常に面白かった。赤報隊事件は右翼の仕業とばかり思っていたら、例の宗教団体(と、その政治団体など)も関与してるかも?という内容で、興味深く読んだ。右翼団体の多さと複雑さにも驚いたが、著者の執念(記者魂?)にも恐れ入った。例の宗教団体も当時、朝日ジャーナルで特集されたことから恨みつらみで怪しい気配。ただ、朝日新聞内部(上層部)のゴタゴタだったり、権力や利権への迎合は残念。2022/08/18

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