内容説明
平安京=京都ではない!
清水寺、知恩院、三十三間堂、祇園、東山、鴨川……いずれも平安京の外だった。
では、今の「京都」の原型をつくったのは一体誰なのか。
壮絶な権力闘争と土地開発の知られざる物語を気鋭の歴史学者が読み解く。
【これを読めば「京都」通になれる】
●武装した強盗集団に狙われ続けた平安京
●平安京には寺を作ってはいけないルールがあった
●廷臣の邸宅を次々と移り住む天皇
●貴族も庶民も楽しんだ「晒し首」パレード
●勝手に戦争して顰蹙を買った源氏
●都のど真ん中で起こった殺し合い「保元の乱と平治の乱」
●京都駅周辺を開発したのは平家だった
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
65
「平安京」が「京都」になるまでを、武士の活躍と共に解説をした一冊。これで言われて改めて気が付いたけど、現在の京都の名所ってそのほとんどが平安京の外にあるというのは目から鱗。長い間住んでいたけど、全然気にした事が無かった。あと本書は鳥羽や六波羅といった東山、八条等の平安京外の発展の記録であるとともに、主に院政期の通史としても読む事が出来、そちらでも十分面白い。保元・平治の乱以前の事等には暗かったので、兎に角教えられる事多し。あと自分が昔住んでた場所に意外な建物があったりして、そちらも興味を惹かれたし。2020/04/21
みこ
26
序盤から平安京≠京都という目から鱗な理論を展開。平安貴族(実質藤原氏)によって作られた血の穢れとは無縁なそれでいて藤原氏の既得権益で固められた平安京を壊したのが白河上皇。白河上皇は武士を掌握することで貴族勢力に対抗したが、力をつけた武士たちによって平安京は破壊されていく。院政から保元・平治の乱を経て清盛が権力を握るまでを解説しているのだが、清盛が天下人になったという結果ありきで書いていないので臨場感を持って楽しめた。2020/08/12
ぽんすけ
25
平安京=京都ってイメージだったんで清水寺や金閣銀閣、三十三間堂、平等院といったメジャー観光地が従来の平安京の中に一つもないと知って驚いた。歴史の時間に資料集で見た平安京が実際には設計通り開発もされずただの桓武天皇の妄想図面とかびっくりである。元々の平安京の右京や南部が低湿地帯で居住に向かなかったってのが一番の原因だろうけど、白河院から始まる院政時代と、平氏の拠点となった六波羅開発が今の現代人が認識する「京都」を作っていったということが大変わかりやすく解説されていて良かった。やっぱりこの先生の本は面白いな。2025/01/10
寝落ち6段
19
京都観光といえば、どれも平安京の外側ばかり。その指摘には虚を突かれた。あたかも京都は朝廷の、天皇のお膝元で、天皇を中心に形成されてきたとばかり思いこんでいた。貴族中心だったものが、白河院政を変換点として武士が台頭するにつれ、武士中心の都市に変貌していった過程を追っていくと、町の構造の変化も納得する。あまりにも京都を、歴史ある古都だと、イメージが先入観を作っていた。そうだ、京都は戦乱の都だったのだと思い起こさせられた。書きっぷりも臨場感があり、とても面白かった。2021/05/04
kawasaki
16
『平安京はいらなかった』から読むと、「都市のかたち」と「権力のかたち」「社会のかたち」を一連のものとして捉える著者の描きだす論がよりわかりやすい。タイトルにある「京都」の拡張について語りつつ、「京武者」論や「西八条殿=清盛邸」説などに対する疑義の提起、「獄門」「天下」といった語の解説など、一般向けの語り口でありながらも濃厚な内容。全体も個々も興味深いが、山門衆徒・武士・白河院と登場勢力全部強烈な嗷訴のインパクトや、暴力とスマートさを同居させる平家の相貌などが印象に残る。2020/05/17