内容説明
バルセロナを中心にスペイン随一の繁栄を誇るカタルーニャ。かつてイタリアや遠くギリシャまで地中海全域を支配した大帝国だった。建国の父・ギフレ毛むくじゃら伯、黄金時代のジャウマ征服王や、騎士・錬金術師・怪僧らが地中海狭しと活躍する栄光の中世から、長い衰退期と混乱を経ながらも再生への努力を続ける現代へ。20世紀初頭のバルセロナの繁栄、スペイン内戦、21世紀の独立運動までを増補した決定版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
45
改版されていることからも、読者の反応が良いことが分かる。歴史学者ではない分、熱い想いが「まえがき」と行間から溢れていて、カタルーニャ愛に溢れた記述も許されている。ジャウマⅠ世やリュイの記述が始まる辺りから物語っぽく、中盤まで来ると楽しんで読める本。後に文学作品を読むときに背景として役立つ可能性が高い。国民国家の画の下地にそれ以前の地域の版図が描かれている。独立運動が国民国家としての財政問題に帰着する位ならば、せいぜい強い自治権とカタルーニャ語の使用はじめとした文化運動という穏当な着地で済ませてもらいたい。2022/10/18
翔亀
38
【コロナ50】14世紀の黒死病を扱った「海のカテドラル」を読もうとしたら、舞台はバルセロナ、当時のカタルーニャ・アラゴン連合王国の史実に忠実な歴史小説だった。カタルーニャって何だっけ。全然イメージが沸かないとあって、予習のため本書を読んでみた。面白いではないか。バルセロナを中心に10世紀から15世紀にかけて一時はイタリアまで領土広げた王国があった。本書は現在に至るカタルーニャ地域の歴史なのだが、注目すべきは現在まさにスペインからの独立運動の真っ最中なのだ。そのわけも本書により納得できる。今に至るまで↓2020/08/31
サアベドラ
28
カタルーニャの歴史を人物中心に物語風に語る新書の増補版で、近現代史と近年の独立運動の記述が追加されている。2019年刊(初版は2000年刊)。著者はカタルーニャの言語と文化の専門家。あとがきにも書いてあるが、増補部分は時代が近いためか出来事の記述が多く、物語調の中世史パートとはいささかトーンが異なる。独立運動がここまで泥沼化した原因を、マドリードの頭の硬さとバルセロナの内輪揉めの両方に求めている。どちらに転んでもろくなことにならないのはスコットランドと同じだが、こちらのほうがより悲惨になりそうではある。2020/04/04
健
18
カタルーニャの歴史、侮れない。かつてはシチリア、ナポリ、ギリシャの一部を支配した地中海の帝国だったとは!そのような歴史があれぱ「わが民族」を誇りに思うのも当たり前だ。スペイン語とカタルーニャ語は全く違う言語とのことだし、スペインから独立したいという気持ちが痛いほど理解できた。にしてもヨーロッパの王族の姻戚関係は複雑だ。カタルーニャの国王とカステーリャ(スペイン)の女王が結婚して、息子カルロス1世(カール5世)が両方の国を引き継いだ頃からカタルーニャがいち地方として没落し始めたようで、その盛衰が興味深かった2022/11/03
MUNEKAZ
14
まさに「物語」といった名調子で、カタルーニャ地域の興亡を描いた一冊の増補版。「征服王ジャウマ1世」「乱心者ラモン」など英雄・奇人たちの闊歩する栄光に満ちた中世から、近代以降の苦闘、そして新たに追加された昨今の独立運動とカタルーニャの人々が歩んだ苦難の歴史が描かれている。時代が近くになるにつれ「物語」が薄れ、重く辛い現実が表れてくる構成がなんとも印象的。地域のアイデンティティとは何か、いったんは失われた文化を取り戻すとは何なのかを考えさせられる。2020/01/14