内容説明
ここに一冊の名作がある。角野栄子の『魔女の宅急便』である。……(中略)……さて、すでに述べたように、『魔女の宅急便』の発行は一九八五年である。一九八五年は昭和六十年だ。その後、昭和は数年つづき、さらに平成が三十年、令和に入った今、合わせて三十数年の年月が流れている。
明治が終わってまだ二十年という時に、中村草田男は、<明治は遠くなりにけり>と言った。さらにそれより長い、年号も令和になった今で言えば、<昭和は遠くなりにけり>のはずだ。
昭和が遠くなったかどうかは別として、『魔女の宅急便』は?
『魔女の宅急便』は<遠くなりにけり>だろうか?
否!
遠くなるどころか、この作品は発行当時よりもさらに読者の身近になっている。発行以来三十年以上経っているにもかかわらず、『魔女の宅急便』は書店の棚に残りつづけている。
その理由はどこにあるのか?
この書はそれを探ることが目的である。
――本文「はじめに」より
『ルドルフとイッパイアッテナ』作者・斉藤洋の視点から、現代読者にとっての『魔女の宅急便』の意味や価値を探り、各章ごとに丁寧に読み解く一冊。
巻末には角野栄子・斉藤洋の豪華対談も。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるき
18
ジャンル的には児童書なんですよね。ジブリの映画があまりにも有名ですが、原作が素晴らしいので未読の方は是非一度。考察にもありますが、何世代にもわたって愛されるって凄いことです。2022/02/08
もちこ
12
本文からの引用も多々あり、改めて『魔女の宅急便』を読み返してみたくなる。 巻末の対談が特に面白かった。 「教養めいたものを読み取ろうとする解釈」をしたい斉藤さんと、「どう読むかは読者に委ねる」という角野さんの、一見対立しているようなやりとりは、読んでてクスッと笑ってしまう。 とにもかくにも、『魔女の宅急便』の魅力を伝えている一冊。 ジブリ映画しか見ていない人は、ぜひ原作も読んでほしい。 (ちなみにジブリ映画の方も大好きです!)2024/07/24
小紫
7
魔女の宅急便の第一巻のみを考察した作品論。二巻目以降は読んだことのない私にはちょうど助かりました(苦笑)。この本の前半部分は、母と娘との関係性についての説明で、その娘であるキキの成長を、このように作者は捕らえているのか、と興味深く読みました。後半の角野さんとの対談は、ちょっとケンカ腰で、互いに立場がが違いすぎているように見えて話し合いにならないんじゃないか、とハラハラしましたわ〜。《図書館》【魔女月間 in 2020(自分用)】2020/10/14
kenitirokikuti
7
図書館にて。児童文学感想ブログで知る。刊行年は今年2020年である。斎藤氏の「ルドルフとイッパイアッテナ」の最新刊が出てるので、関係あるのかもしれない。巻末に角野氏との対談があり、両者が江戸川区小岩の育ちだと知った。斎藤氏、自分はルドルフではなくナツカのおばけ事件簿で知ってるな。新シリーズ「ふしぎパティシエールみるか」がスタートしてたことを知る。2020/10/11
おーね
5
同じフィールドで仕事をしている筆者が考察する魔女の宅急便。百人百様の受け取り方があることをわかってはいても話したかったことなのかもしれない。 内容とは関係ないけれど筆者がいっている「読み始めた本は最後まで読まなければならない」呪縛は本当に恐ろしい力を持っている。逃れるのは難しい。2020/04/05