内容説明
日清戦争に勝利し、維新以来目指してきた近代国家への地歩を固めつつあった日本。その後の日本の政治・経済・文化を担う人間は盛岡に集まっていた。後の内閣総理大臣・原敬、海軍大臣・米内光政、陸軍大臣・板垣征四郎、鹿島組の鹿島精一、言語学者・金田一京助……。錚々たる顔ぶれが並ぶ中、銭形平次捕物帖を著した野村胡堂と、早逝した天才歌人・石川啄木もいた。そんな二人の交流を描いた評論。
感想・レビュー
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パトラッシュ
7
石川啄木に散々迷惑をかけられた同窓生は金田一京助が有名だが『銭形平次』の作者もだったとは。その胡堂自身も苦労しつつ啄木への支援を続けたエピソードは面白いが、啄木の伝記的事実は知られているので「またか」の感は拭えない。しかも詳細なのは啄木の死までで、胡堂が捕物帳作家や音楽評論家として大成するまでは20頁余しかなのは駆け足すぎて看板に偽りありだ。知る人の少ない胡堂の伝記をメーンに、啄木との関係はその一部としたほうが面白かった。もっとも愛読者が後を絶たない啄木に比べ、銭形平次を知らない人のほうが大部分だろうが。2020/03/04