内容説明
発達障害の概念は、精神医学のパラダイムを覆すほどの影響をもたらし、発達障害や、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)に関する研究は、精神病理学の中でも大きな柱をなす重要な領域となっている。臨床知を集積し、発達障害の本質を見極めるという問題意識のもと総勢17人の専門家が集い、相互討論ワークショップを行った。本書には、そこでの徹底した議論を踏まえ書き下ろされた9編の論考が収められている。単にひとつの疾患概念の出現ということを超え、精神医学のパラダイムに深甚な影響をもたらした「発達障害」の精神世界を探究する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
94
精神科の診断基準は元々が曖昧なものである。そこに発達障害概念が加わった。発達障害はスペクトラム(傾向)で示され、正常との間に線が引けない。更に発達障害を持つ人は精神病状態になることがあり、統合失調症や双極性障害との境界が曖昧になった。つまり、我々精神科医は「私の診断って何ですか」と問われたときに返答できない時代を生きている。更に強制的に治療を押し付けるのではなく、共に歩むという方向に風向きが変わりつつある。さて、精神科医はどこを目指すべきなのか。私は「支える」のが今後の精神医療なんだと思う。2022/10/16
ひろか
6
はっきりいって、難しい論文ばかり。ただし、表面的はハウツー的なものばかり学ぶと得られない、本質を考えさせてくれる。まあ、難しいです。2020/02/23
じゅう
0
ASDのフラッシュバックについて当事者の語りがあって共感した。 他にも自分に近い特性の出方をしている当事者のエピソードが紹介されていてよかった。2023/12/02
古脇
0
いまどきSpencer-Brown代数にお目にかかれる貴重書。 自閉症者の記憶・認知能力を論ずる清水光恵「スクラップ置き場と私」が有用。2022/12/08