内容説明
学者ながら右大臣に昇進するが、無実の罪で大宰府に左遷された菅原道真(845~903)。藤原氏の専横が目立ち始めたこの時期、学問を家業とした道真は、英邁で名高く、宇多天皇に見出され異例の出世を果たす。天皇による過大な評価・重用に苦悩しつつも、遣唐使派遣など重大な国政に関与。だが藤原氏の策謀により失脚する。本書は、学者、官僚、政治家、漢詩人として、多才がゆえに悲劇の道を辿った平安貴族を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Book & Travel
49
意外と通して読んだことがなかった菅原道真の生涯。著者は道真を長年研究されてきた文学者ということで、難しい所も多かったが、当時の文章博士になるまでの試験の過程やその職務、道真が学者政治家としてどのように力を発揮し、どのような過程で左遷されてしまったのか、丁寧に辿られていて興味深く読めた。真面目で与えられた職務に精励する道真。それゆえに宇多天皇に重用されて異例の出世を遂げ、挙げ句の果てにその宇多天皇に振り回され左遷されてしまったのは本当に気の毒であるが、他人事とは思えない現代人も多いのではないかと感じた。2019/11/30
きいち
34
代々蓄えた実践的な知識をもとに地道に日々の職務をこなす実直なお役人…日本古来随一の御霊となる後々の姿とはかけ離れたそんな道真像が浮かび上がる。藤原基経はじめ偉いさんのちゃんとした文章の代作とかしてるうちに、必死で正当性の確立に勤しむ宇多天皇にあてにされてとんとん地位を引き上げられ、もう勘弁と辞表出しても認められず挙句の果て左遷…いやこれ、引っ張りすぎた宇多天皇のせいだよね…。◇それにしても、この時期まだまだ中下位貴族には藤原・源以外の姓の出身者も多いんだな。2020/05/11
サケ太
31
菅原道真という男の出生から、昇進していき、没落してく過程が書かれている。詩というものが政治にどんな必要性があるのかという「詩人無用」。学問関係では今も同様の問いがあるが、人は変わらないなぁ、と感じる。「学者」としての道真と「政治家」としてのスタンス。優秀だった故にサボタージュを招き、藤原時平との関係性の悪化を生んだ。という話は興味深い。道真は突然の抜擢で辞職しようとしたが許されず、そのまま左遷されたか。有能なのは間違いないが、タイミングが悲劇的。2019/11/03
terve
29
あくまでも官僚としての道真像に迫る良書。所々に挿入される漢詩も、道真の為人を知るのに適しています。遣唐使の一時的な停止は本書で初めて知りました。ずっと、廃止したと思っていましたので。宇多天皇に取り立てられ、矢面に立つことも多かったようです。醍醐天皇即位後も、重用されましたが、同じく矢面に立ち、それが後の没落に繋がっていくのは何とも悲しい話です。結局、宇多上皇派と醍醐天皇派の権力闘争が道真の没落を決定づけたようですが、道真は宇多天皇に翻弄された人生だったのではないかと思います。2019/10/04
パトラッシュ
25
出る杭は打たれるというが、人は頭の良さでどうしてもかなわない相手を劣等感から排斥する場合がある。優れた学者であるため宇多天皇に重用され異例の出世を遂げた道真は、次代の権力者である醍醐天皇の側近に疎まれたのが大宰府左遷の原因との見方は納得できる説だ。道真を失墜させた時平は歴史の極悪人扱いされているが、もともと道真と親しかったのに高い家柄に生まれたボンボン故に反道真派に取り込まれたのなら派閥抗争の犠牲者かもしれない。宮廷社会で誹謗中傷されながら懸命に働く道真の姿は、現代人にも共感できる不器用な知識人像を結ぶ。2019/10/21
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