岩井克人「欲望の貨幣論」を語る

個数:1
紙書籍版価格
¥1,650
  • 電子書籍
  • Reader

岩井克人「欲望の貨幣論」を語る

  • ISBN:9784492371244

ファイル: /

内容説明

大反響の異色経済ドキュメント4作目。
同番組シリーズがテーマとする「欲望が欲望を生みだす資本主義の先に何があるのか」。
今回は、仮想通貨が生まれ、キャッシュレス化が進む現象を捉え、資本主義の基本を成す貨幣に着目。
「貨幣論」「会社は誰のものか」など、正統的な近代経済学の枠組みに留まらず、様々な問いかけ、考察をしてきた日本を代表する経済学者である岩井克人氏が登場する「欲望の資本主義 特別編 欲望の貨幣論2019」(2019年7月14日放送)をベースとし、追加独自インタビューも交えた書籍化。
NHK総合「欲望の資本主義」(2016年5月放送)を書籍化した『欲望の資本主義』、2017年新春放送の「欲望の資本主義2017」・2018年新春放送の「欲望の資本主義2018」を書籍化した『欲望の資本主義2』、2019年新春放送の「欲望の資本主義2019」を書籍化した『欲望の資本主義3』(6月末刊行予定)に続き、番組シリーズのコンセプトにさらに肉迫する意欲的な企画。

目次

まえがきにかえて 岩井克人が「欲望の資本主義」に出合うとき
第1章 「ビットコイン」は究極の貨幣か
第2章 金融投機と二つの資本主義論
第3章 貨幣は投機である
第4章 「資本主義」の発見――アリストテレスと「近代」
あとがきにかえて 逆説の貨幣、欲望、資本主義

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ひろき@巨人の肩

109
貨幣とは貨幣として受け取られるから貨幣である。貨幣とはモノを手に入れるための「手段」であるが、あらゆるモノ〈可能性(=欲望)〉を手に入れられる性質により、貨幣それ自体が「目的」となる。つまり「おカネは純粋な投機」ということ。よって金融投機においては、ケインズの「美人コンテスト」の例え話で示されるような投機家同士の牽制により、アダム・スミスの「見えざる手」は働かない。貨幣経済とは効率性と安定性の不均衡動学により成り立つ。またこの貨幣の逆説が、人間に匿名性という自由を与え、抽象性が社会の近代化に寄与する。2022/06/06

キク

56
「貨幣とは貨幣であるから貨幣である」んー、哲学っぽい。経済や物理を突き詰めると、神や哲学の領域に踏み込んでいくことになるのって、なんでなんだろうな。宇宙飛行士が帰還後に宗教にのめり込むとか、ちょこちょこ聞くもんな。ビットコインは貨幣にはなりえないだろうと著者はいう。「値上がりを期待して投機対象になると、交換手段として流通しなくなるので、貨幣の条件を満たせなくなる」物々交換ではできることに上限があった。でも人だけがもつ想像力が、普遍の交換性という共同幻想を貨幣に与え、人の欲望を無限まで高めることになった。2023/07/07

おさむ

37
NHKの「欲望の資本主義シリーズ」は欠かさず見ている。演出が凝りすぎでスピードが早すぎるが、見応えはある。本著は昨年、特別編として放送された「貨幣論」をまとめたもの。貨幣論の論客、岩井克人が古代ギリシアから脈々と続く貨幣の思想を読み解きながら、貨幣の本質を問う。新古典派と不均衡動学派という2つの経済学の潮流も紹介し、「世界を市場で覆い尽くすグローバル化は、新古典派の壮大な実験だった」と指摘する。その限界が明らかになりつつある今、自由と安定のバランスをどう取るか。新たな経済学が求められている。2020/04/19

yutaro13

26
貨幣論と言えばこの方。「貨幣とは貨幣であるから貨幣」なのであり「貨幣の無限の増殖を求める経済活動」が資本主義である。アリストテレスが指摘した資本主義の逆説(=ポリスの存立を可能にする貨幣それ自体がポリスそれ自体を崩壊させる可能性を作り出す)が顕在化しつつある現代において、カントの倫理学が重要とのことだが詳細は次作の模様(なお古代ギリシアの「近代性」を産んだのが貨幣の流通だとするシーフォードの指摘も興味深い)。注釈で現代貨幣理論(MMT)批判が展開されているが、ここも更に詳しく読みたいところ。2020/07/16

さきん

22
貨幣法制主義は否定。よってMMTは無理と断定。貨幣とは貨幣だから貨幣であるということで、使う機会が多くなれば、価値も付随するという考え。よってビットコインも上手く流通する可能性があると著者は見ていた。自分は貨幣法制主義よりなので、考えが違う。貨幣を法制する権威が大きいほど貨幣の流通が固まるとみている。もちろん権威の大きさが信頼を大きくするメカニズムは自己循環論と変わらないが。2020/03/28

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/14784466
  • ご注意事項