内容説明
ニュートンが大科学者たり得たのはなぜ? どうしてフランス革命時に諸科学が勃興した? 量子力学は歴史の偶然で生まれた? 国家の野心と研究者の探求が重なるところに、歴史の転機は訪れる。近現代史を陰で動かした諸科学の営みとそのダイナミズムを、文理の壁を超えてやさしく語る、あたらしい科学史入門。
第1章 イギリス王政復古と「学会」創設
──ニュートンはなぜ大科学者たり得たか
第2章 フランス革命と化学革命
──なぜ諸科学は動乱期に基礎づけられたか
第3章 普仏戦争と「量子仮説」
──量子力学は製鉄業から生まれた?
第4章 世界大戦と核物理学
──真理の探究はいかに歴史に巻き込まれたか
第5章 変貌する現代科学
──巨大科学は国家を超える
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みこ
22
ニュートンの時代から現代に至るまでの科学の歴史と世界史をリンクさせてまとめた一冊。学校では物理や化学の授業でしか名前を聞かない人たちを通じて世界史を論じてくれる。フランス革命に巻き込まれる形で処刑されたラヴォアジエや第一次世界大戦で戦死したブフナーなど歴史の波は学者たちにも容赦なく襲い掛かっていたようだ。最後に語られる宇宙という大敵を相手にすれば地球が一つにまとまる可能性は敵を一つに定めて人心をまとめようとする昨今の世界情勢にも通じる。今のコロナについても言えることかもしれないが。2020/03/12
sonettch
17
正直、世界史だけだと読書のモチベーションが続かないのだが、科学史という視点が入るととたんに面白く読める。私の興味の対象は自然科学なのだということがよくわかった。この調子で、音楽史や美術史にも挑戦してみようかな。2020/06/09
templecity
17
世界史に沿ってニュートンからアインシュタインなど現代科学者に至るまでの歴史が記載されている。レントゲンのX線発見のあたりまで新しい科学的発見は無いという今から考えると傲慢な考えが浸透していたが、その後、古典力学では説明できない事象が発見されていく。鉄を精製するのに木炭が使われてきたが、そのために森林伐採が進み環境破壊への問題意識が出てきていた。その後、英国で石炭を使うことが発見され、英国の産業革命が進んで行った。またアンモニア精製が発明され肥料生産が可能となり農業生産量が飛躍的に伸びた。(続きあり) 2020/02/27
さとうしん
16
ニュートンから核兵器、宇宙開発まで。研究成果の発表は当初学者同士の手紙のやりとりで行われ、王立協会に寄せられた手紙をまとめるという形で学術雑誌の刊行が開始されたとか、自然科学の方法を社会科学に取り入れようとして混乱を引き起こすといったことはニュートンの時代から繰り返されているという話が面白い。マイトナーと「ガラスの天井」、レーナルトらによるアインシュタインの業績評価を見ると、科学そのものは客観的・普遍的でありっても、研究の評価は必ずしもそうではないことになりそうだが。2020/07/15
ta_chanko
15
何となく、何もない平穏な時代に科学や文化が進歩したと思っていたが、実際には大違いで、ピューリタン革命・名誉革命・普仏戦争・世界大戦・冷戦などの激動の時代に科学が大きく発展していたことが分かった。また、かつてはニュートンのような天才が科学を牽引してきたが、今は個人プレーではなく集合知が求められる時代になった。国際宇宙ステーションの運営や核融合炉の開発など。科学は普遍、科学に国境はない。2020/02/27