内容説明
いつも突然泊まりに来るだけの歳上の恵梨香
に5年片思い中の正臣。婚約者との結婚に自
信が持てず、仕事に明け暮れる津秋。叶わな
い想いに生き惑う二人は、小さな偶然を重ね
ながら運命の出会いを果たすのだが――。
と秘密を抱えた男女の物語が交錯する時、信
じていた恋愛や夫婦の真の姿が明らかにな
る。今までの自分から一歩踏み出す恋愛小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
papako
72
お気に入りさんの阿闍梨餅に惹かれて。人を殺す夢を見る津秋は東京の韓国料理屋で働く。人に殺される夢を見る正臣は京都でドミトリーをやっている。二人の物語はどこで交わるの?そして彼女たちの抱える『不在』が明らかになり、そっかタイトルはここなんだとなった。けど、彼女は絶望を選ぶかどうかはまだわからないね。なんか違う気もするし、不在とはお別れしないかもしれない。人は食べ物で生きている。ビニールに入った内臓は示唆的だ。とても曖昧ででもしっかりとした人の想いに溢れた物語でした。うん、よかった!2020/09/27
mincharos
43
まずタイトルと装丁がおしゃれ。構成もだし、台詞もいちいちおしゃれ!そして章のサブタイトルに朝食/昼食/夕食にそれぞれ食べたものがついてるのも好き!散らばったパンくずを彼は掃除しないから、自分が掃除する不満。マリッジブルーな女の話か?と思ったら、全然違った!京都に定期的に訪れて、正臣の家に泊まりに来る恵梨香さん。彼女がすごく魅力的で、彼女も実は絶望を抱えていて、、香子さんとキムさん夫婦いいなぁ。距離感が好ましいし、キムさんが超かっこいい。「最後にもう一個だけ教えて」で聞くべき質問とは?ボーイミーツガール♡2021/02/02
竹園和明
41
柔らかで浮遊するような質感ながら、登場人物のキャラにメリハリがあって締まった印象もある。正臣と津秋という全く無関係の2人を軸に、それぞれの周辺の人達が微かな関わりで繋がって行く。恵梨香に翻弄される正臣、“彼”に翻弄される津秋。しかし周りの人々が抱えた事情が明らかになるに従い、正臣と津秋は生きる意味を学んで行く。人は大なり小なり悩みや苦しみを抱え、それと渡りを着けて次へと進むもの。希望を共有する人も大切だが、絶望を共有する存在も然り。山あり谷あり。その両者を受け容れられたら、きっといい人生になるのだろう。2021/04/23
さくら★もち
31
なんて美しくて寂しくて、あたたかい物語なんだろう。東京で、京都で、淡々と続く毎日を叶わぬ願いとともに生きる人々の想いに胸が締め付けられた。できれば悲しい目に遭いたくないし、幸せに暮らしたい。なのに自分だけが不幸だと絶望してしまった時、どうやって明日を生きるのか。知らず知らず緩く支えあう彼らが、強い気持ちで一歩踏み出す姿に希望が見えて、人生捨てたもんじゃないなと思った。各話に登場する食べ物が良い!参鶏湯食べたい!食べ物について考えるとき、それは、明日も生きると宣言することなのだ。💪( •̀ᴗ•́ ) 2023/06/25
mayu
24
初読み作家さん。なんだろうかこの不思議な空気感。語彙力が足りなくてどう表現するのが良いのかわからないけれど"エモい"というのはこういう時に使うのだろうか。描かれる食べ物と共に進む物語は先が読めず、掴めそうで掴めなくてどんどん読みたくなる。後半にかけて急に色んなものが襲ってきて泣いちゃった。出てくる人が自分の気持ちに一直線で、驚くほど行動的で少しうらやましい。絶望について語るキムさんがかっこいい。読み終えた後に大切な人が側にいてくれさえすればそれだけで十分幸せな事だよねとか思ったりしちゃう一冊だった。2025/04/06